スタッフのモチベーションの高め方
長引くコロナ禍、相次ぐ水害など、クリニック経営はとても困難な局面を迎えています。患者が急に増えたり、また急に減ったりと、環境変化の影響で患者数が乱高下し、なかなか一定にならない状況が続いています。このような状況下では、スタッフの心身の疲労もピークに達しているのではないかと危惧します。そこで、今回はスタッフの「モチベーション」について考えてみたいと思います。
モチベーションとは何か?
モチベーションを辞書で引くと、「やる気」「意欲」「動機」などの意味で用いられる表現。主に「行動を起こす契機となる刺激や意欲」といったニュアンスで用いられる。よく「モチベ」と略される。「特にやる気もないし必要に駆られているわけでもない」というような状況を指して「モチベーションがない」と表現したりする(実用日本語表現辞典)、と書かれています。この意味から考えると、「動機付け」によって、モチベーションが上下するのではないかと推測されます。
「動機付け」といっても、訓示をしたり、指導をしたりというのは、かえって逆効果なケースもあります。私も含めて「おじさんの小言」を好んで聞きたい人はいません。モチベーションがかえって下がってしまう原因になりかねません。
スタッフの話を聞く時間
日々忙しい業務の中で、「スタッフの話を聞く時間は取る」のが難しいという院長の声をよく聞きます。多くのスタッフを抱えるクリニックであれば、それは多くの時間と労力が必要になります。一方で、定期的に「個別面談」を行っていたり、「朝礼」「院内勉強会」などを活用しているというケースもあります。
まず、大切なのはスタッフとコミュニケーションをとる「頻度」を増やすために、1日の通常業務の中にどれだけ盛り込めるかが重要です。これは受付、看護師、技師など分け隔てなく機会を作るためには、それなりの仕組みが必要になるのです。日々の朝礼や院内勉強会がその仕組みの具体的な例となります。
院長は「聞く」に徹する
次に、様々なコミュニケーションの機会をとる際に、「いかにスタッフの話を聞くか」、言い換えれば院長が一方的に話さないようにすることが重要です。この「聞くに徹する」ことを実践するためには、主導権をスタッフに渡す必要があります。朝礼や院内勉強会での、院長の出番を極力減らし、スタッフ主導で行うようにするのです。それらのやりとりを、院長は注意深く観察し、個別面談時のネタにするのです。
最初のうちは運営もたどたどしく、内容も薄いかもしれません。しかし、それは時間とともに成長していきますので、温かく見守ってあげてください。自主性を伸ばすためには、まずはやらせてみることが大切で、内容やレベルは二の次で良いのです。
役割を与え、できたら「褒める」
モチベーションは本来、「能動的」に内から湧き上がるように高まることが良いのでしょうが、能動的にモチベーションを高められる人は多くいません。どうしても、受動的になりがちです。つまり、外からの働きかけが必要となるのです。
そこで1つの方法として、「役割を与え、できたら、褒める」ということをお勧めしています。褒めるというのは、一定の成果に対して評価することです。評価と聞くと、金銭的な報酬をイメージされる方もおられますが、金銭は一過性であり、不公平感が伴いますのでお勧めできません。すぐ実践できることは「褒める」ことです。
この褒めるという行動は、「マズローの欲求5段階説」の承認欲求にあたります。褒めて欲しいという欲求は誰にも備わっている基礎本能と言えるでしょう。しかし、これまた褒めるタイミングを間違えると、おべんちゃら、ご機嫌取りと、マイナスに働いてしまいます。正しく褒めるためには、「役割を与え、できたら褒める」という原理原則を守ることが大切です。
<ポイント>
➀ スタッフとのコミュニケーションを通常業務に含め「頻度」を確保する
② 朝礼・勉強会は、スタッフ主導で開催し、院長は聞く(観察)に徹する
③ 観察した内容は個別面談のネタにする
④ まず役割を与え、できたら「褒める」