診療報酬10月改定について

2024年診療報酬改定は、政府が進める「診療報酬改定DX」の影響から改定時期が後ろ倒しされ、6月改定となりました。また、10月にも改定があるという異例の状況となっています。そこで、今回は10月改定の内容について解説します。

 

10月から長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養の仕組みが開始

2024年10月から長期収載品について選定療養の仕組みが導入されます。具体的には、長期収載品と後発品の価格差に対して、後発医薬品の最高価格帯と長期収載品の価格差の4分の3までを保険給付の対象に、4分の1が特別の料金として選定療養の対象となります。

長期収載品が選定療養となるケースとしては、以下の通りです。

  • 銘柄名処方の場合で、患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合
  • 一般名処方の場合で、患者希望により長期収載品を処方・調剤した場合

ただし、医師が医療上の必要性があると認めた場合や、薬局に後発医薬品の在庫が無い場合など、後発医薬品を提供することが困難な場合については、選定療養とはならず、引き続き保険給付の対象となります。

 

医療上必要と認められるケース

医師が医療上必要と認める判断基準としては以下の通りです。

① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合であって、患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。

② 患者が後発医薬品を使用した際に、副作用や、他の医薬品との飲み合わせによる相互作用、先発医薬品との間で治療効果に差異があったと医師等が判断する場合であって、安全性の観点等から長期収載品の処方等をする医療上の必要があると判断する場合。

③ 学会が作成しているガイドラインにおいて、長期収載品を使用している患者について後発医薬品へ切り替えないことが推奨されており、それを踏まえ、医師等が長期収載品を処方等する医療上の必要があると判断する場合。

④ 後発医薬品の剤形では飲みにくい、吸湿性により一包化ができないなど、剤形上の違いにより、長期収載品を処方等をする医療上の必要があると判断する場合。ただし、単に剤形の好みによって長期収載品を選択することは含まれない。

また、薬局の薬剤師が上記①~③に関して、医療上の必要性について懸念することがあれば、医師に疑義照会することが考えられ、④に関しては、医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することも考えられるとしています。なお、この場合においても、調剤した薬剤の銘柄等について、調剤に係る処方箋を発行した保険医療機関に情報提供は必要としています。

選定療養の対象品目の範囲

選定療養の対象品目については、後発品上市後5年を経過した長期収載品。ただし、置換率が極めて低い場合(市場に後発医薬品がほぼ存在しない場合)については、対象外となります。また、後発品上市後5年を経過していなくても、置換率が50%に達している場合も選定療養が適応されます。なお、今回対象となる品目については厚労省のホームページにて公開されています。対象リスト:https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001247591.pdf

 

公費負担の場合

 公費負担については、国の公費および地方単独公費(こども医療費助成など)のいずれも「対象外の者は設けておらず、長期収載品を希望した場合についても、他の患者と同様に、長期収載品の選定療養の対象となる」としています。

 また、生活保護については、医療上の必要性があると認められず、医療機関・薬局において後発医薬品を提供することが可能である場合は、長期収載品を医療扶助、保険給付の支給対象として処方・調剤することができないため、患者が単にその嗜好から長期収載品を希望した場合も、後発医薬品を処方・調剤することになり、「特別の料金」を徴収するケースは生じないとしています。

 

医療DX推進体制整備加算の変更(10月~)

 6月改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」については、6月時点では明らかにされていなかったマイナ保険証の利用実績の値が示され、10月からは利用実績に応じて3段階に評価区分を設けることとなりました。

現行

10月~

医療DX推進体制整備加算 8点

医療DX推進体制整備加算1 11点

医療DX推進体制整備加算2 10点

医療DX推進体制整備加算3 8点

マイナ保険証の利用率実績については、以下の表の通りとなります。

計算時期

令和6年7・8月

令和6年10・11月

適用時期

令和6年10月~

令和7年1月~

加算1

15%

30%

加算2

10%

20%

加算3

5%

10%

なお、計算時期としては、適用時期の3月前のレセプト件数ベースのマイナ保険証利用率を用いるとしていますが、令和6年10月~令和7年1月の期間は、適用時期の2月前のオンライン資格確認件数ベースのマイナ保険証利用率を用いることもできるとしています。今後、2025年4月以降のマイナ保険証利用率の実績要件は、附帯意見を踏まえ、本年末を目途に検討し再設定を行うとしています。

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