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どうなる医療事務の未来

 AIの普及でなくなる仕事

「AIの導入によって日本の労働人口の49%の仕事が10-20年以内になくなる」という野村総研とオックスフォード大学の共同研究レポートが2015年に発表され、大きな話題となりました。その中に事務職が含まれていました。医療事務に限らず、事務員という仕事自体がなくなると予測されていたのです。それ以外の仕事では、電車運転士、路線バス運転手、警備員、スーパー・コンビニ店員、タクシー運転手、銀行員、プログラマー、工場勤務者などが挙げられていました。

 

10年たって医療事務は存在するが、働き方に変化が

そのレポートから約10年が経った現在、いまだ医療事務はなくなっていませんが、医療事務を目指す学生は、少子化の影響も相まって、確実に減少傾向にあります。また、電子カルテやレセコンなど医療機関のコンピュータの普及によって、医療事務の働き方、求められる資質に変化がみられるように感じます。

 

従来の医療事務の仕事

従来、クリニックの医療事務スタッフの仕事は、受付、会計、レセプトの3つでした。受付では、保険証を預かり登録し、診察券を発行します。また、問診票を回収し、カルテの発行なども行います。会計では、患者から自己負担金を受け取り、お釣りを渡します。その際、処方箋と領収所、明細書を渡していました。また、月末月初のレセプト業務では、カルテの診療行為をレセプトデータに変換し、請求を行います。当然、そこには点検作業も含まれます。これらが医療事務の仕事とされてきました。医療事務は、レセプト点検という点ではスペシャリスト、受付会計精算という点ではスペシャリスト。両方の側面を持っていると言えます。

 

医療事務の資格の1つが終了する

私は10年ほど医療事務専門学校の講師をしていますが、この10年で医療事務を取り巻く環境は大きく変化しました。講座名も「医療事務講座」から「医療クラーク講座」「医療事務クラーク講座」などに変わってきています。大きな変化としては、これまで行われてきた医療事務資格の1つである「診療報酬請求事務能力認定試験」が2025年に廃止されることが決定しました。同資格は、「医療事務の資格で一番メジャーなものは何ですか?」と質問された際に答えていたもので、その資格が2025年でなくなると驚かれています。

この試験は、今の時代に合わなくなったから、役割を終えたと考えるのが妥当でしょう。なぜなら、いまだにレセプトを手書きで作成する試験だからです。他の試験はマークシート方式なのに、この試験だけは、定規と鉛筆、そして診療報酬点数表を使って書き写すという、コンピュータ以前の時代の試験方法だったのです。電卓と点数表の持ち込みが認められているのは、早く計算し、正確に書き写す能力が求められていたからです。

 

レセプトを作るのは電子カルテ・レセコンの仕事

いま診療報酬点数表はレセコンや電子カルテに内蔵されていますし、計算するのもレセプトを印刷するのもレセコンや電子カルテの仕事です。診療行為を入力すれば、自動的にデータが反映されます。レセプト作成のスペシャリストという視点で見ると、医療事務スタッフのニーズは減っているのです。

 

医療事務から医師をサポートするクラークへ

今はどちらかというと、医師の入力の補助をするケースが増えています。例えば、電子カルテに入力されたデータが間違っている場合に修正したり、本来請求できる加算が請求されていない場合に請求漏れを指摘したり、医療事務スタッフは、医師の入力内容をチェックし、修正を促す役割を担うようになっています。

しかし、電子カルテは発生源入力の原則に基づいていますから、医療事務スタッフが修正するというのは本来、おかしな話です。医師が自ら入力し、修正するべきなのです。医療事務スタッフが気づいて指摘し、医師が修正するという、二度手間が発生してしまっているのです。

医師の隣で、医療事務にレセコンに入力させるのがクリニックでのクラークの始まりです。以前は、医師の隣でレセコン入力をするスタッフを「台付さん」と呼んでいました。机に付きっきりで入力作業をすることから、そう呼ばれていたそうです。電子カルテの導入によって、「台付さん」は「クラーク」に変わっていったのです。

 

AI時代に必要なコンシュルジュという仕事

AIやパソコンの普及によって、新たに生まれる仕事があります。それが「コンシェルジュ」です。これからはコンピュータが苦手な人をサポートする人が必要になります。例えば、オンライン資格確認で困っている患者をサポートするのも、コンシェルジュの仕事です。コンシェルジュがいないクリニックでは、患者が困っているケースが多いです。

先日、あるクリニックに行った時に、「なぜコンシェルジュを置いていないのですか?患者さんが困っているじゃないですか」と言いました。先生は「受付が忙しいから手が回らない」と言っていましたが、それは本末転倒です。患者が困っているから受付が忙しいのであって、サポートする人が必要なのです。先生は、スタッフではなく、患者が困っていることに目を向けるべきなのです。

その先生は私の言葉で気づいてくれました。「スタッフを楽にするのは自分の仕事で、その先に患者さんの満足があるのなら、まずやるべきことは、どの業務を自動化するかを考えることだ」と。

mailmaga

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