最新、電子カルテの入れ替えについて

電子カルテの標準化

2024年現在、電子カルテの普及率はクリニックにおいて約5割に達し、新規開業では当たり前、既存開業でも多くのクリニックが電子カルテの検討・導入を進めています。この流れに対して、政府は「2030年までにおおむね100%の医療機関で電子カルテの導入を進める」と宣言しており、その後押しになるよう電子カルテの標準化、標準型電子カルテシステムの開発を進めています。

この標準型電子カルテの要件には、HL7FHIRという世界的に普及している情報交換規格が採用されています。将来的に、この規格がすべての電子カルテに採用されることになると、論理上全ての電子カルテの情報交換が可能になり、乗り換えが簡単に行える世界が実現されることになります。

 

電子カルテの入れ替えを決意するきっかけ

 さて、「電子カルテを入れ替えたい」と医師が考えるのはどんな時でしょうか。私の経験から以下のようなケースが考えられます。

  • 電子カルテメーカーが倒産あるいは吸収合併された場合
  • 電子カルテメーカーの機能(スピードも含む)に不満がある場合
  • 電子カルテメーカーのサポートなど対応に不満がある場合
  • オンプレミス型からクラウド型に変えたい場合

電子カルテの倒産や合併については、ある意味やむを得ないことで、クリニックにとっては災難に見舞われたと思うしかない残念な出来事です。しかしながら、機能やサポートなどの不満については、入れ替え後のメーカーが理想通りかどうかはわかりませんので、慎重に製品選定を進める必要があると考えます。

 

電子カルテの入れ替え方法

冒頭にあげた政府が進めている電子カルテの標準化については、少し先の未来の話であり、現状電子カルテの入れ替えについては以下のような対応が行われています。なお、コストデータ(カルテの右側)はレセプト電算ファイルによって移行が行えるケースがほとんどで、ここでいう電子カルテデータとは記事データ(カルテの左側)のことを指します。

 

  • 既存の電子カルテを閲覧用に一部残し、新規の電子カルテと並行して利用する。

このケースは、「データ移行は行わない」という決断をしたケースで、移行費用は発生しないことになります。

  • 既存の電子カルテのデータを新規電子カルテに移行する。

このケースは、特定の条件下で移行ツールが開発されている場合に実現可能となります。これについては、移行先のメーカーに確認が必要となります。

  • 既存の電子カルテデータを、ビューアツール(閲覧ソフト)等を利用して、新規の電子カルテと並行して利用する。

このケースは、既存の電子カルテデータをPDFやJPEG、HTMLなどに変換して、情報を抽出し、新規電子カルテと連動させるという方法です。

 

電子カルテ入れ替え時の注意点

 電子カルテの入れ替えについては、電子カルテのみに注目しがちですが、連動する予約システムやWeb問診、画像ファイリングシステム、外注検査システムなどの周辺システムにも影響をもたらす問題であることを忘れないでください。システム間連携は、かなり現場レベルで特別に行われていることも多く、システム間の相性(連携実績)などの問題から、すべてのシステムが再検討になることもあり得るのです。

 また、電子カルテに取り込んだ「スキャンデータ」や「書類データ」についても移行できるかどうか、移行できないのであれば、どのように新しい電子カルテで確認するかを検討する必要があります。

 さらに、受付メモや患者メモ、付箋など、院内の情報共有のために記載された内容(カルテ欄外の記載)についても、移行が困難なケースがほとんどであり、移行を忘れがちです。この点については、クリニック側が手動で行うことになりますので、移行時に院内で担当割をして忘れずに行ってください。

mailmaga

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