コロナ禍のクリニック経営:第2回「ウィズコロナで変わったクリニック経営の常識」
クリニック運営において、特に大きな影響をもたらしているのは「感染症」に対する意識の変化でしょう。政府が提唱する「新たな生活様式」を守りながら生活することが余儀なくされており、「患者」の受療行動にも大きな変化が生まれています。いま、クリニックは「新しい受療行動」を踏まえた「新常識」で経営を行う必要が出てきているのです。
ウィズコロナで変わったこと
コロナ禍でマスク着用、手洗い、3密を避ける行動など「感染症対策」が進むことで、確実にかぜ症状やインフルエンザなどの季節系疾患が減少しています。また、コロナ禍で進んだ「働き方改革」の影響からリモートワークが推奨され、会社への通勤が明らかに減少しました。その結果、公共交通機関の利用は大きく減っており、これも季節系疾患の減少に一役買っています。さらに、娯楽や飲食、イベントなどについても、ソーシャルディスタンスの確保が推奨されており、「人が集まるところ」をできるだけ避けるような行動が進み、ヒトとヒトの接触が減ることで感染症、そして季節系疾患の減少が進んでいます。一言でいえば、「かぜ、インフルエンザ」などに季節系疾患による患者増を期待できない状況となっているのです。コロナ禍の感染症予防行動はまさに、「健康・予防活動」にほかならず、クリニック経営に大きな変化をもたらそうとしているのです。
患者減少に対して、何か手を打たなければ…
コロナ禍では、感染対策が進むことで、予防意識も高まり、クリニックに来院する患者数の大幅な減少を引き起こしています。このまま何も手を打たなければ、当然回復することはなく、クリニックの経営環境はますます厳しい状況へと進んでいきます。「何か手を打たなければ」と焦る気持ちはあるものの、何から始めたらよいのかと頭を抱えているクリニックも少なくありません。
ここはひとまず、過去の慣習をリセットして、新たな考え方で戦略を練る必要が出てきているのではないかと考えます。
購買行動の変化、新しいサービス消費の方法
また、ウィズコロナによる大きな出来事は、購買行動の変化ではないでしょうか。かつては銀座など都心は人であふれかえり、百貨店や専門店で買い物を楽しんでいました。最近では、アジアの観光客などの爆買いなどもトレンドワードとして出ていました。それが、コロナで購買行動が大きく様変わりしたのです。長引く自粛の影響から、オンラインでの購買に一気にシフトしたのです。
このオンラインでの消費行動は、医療の世界にも少しずつ浸透していくことは避けられません。オンライン診療、オンライン服薬指導が大幅に規制緩和され、ほとんど制限なくオンラインで診療、薬の配送ができる環境が整いつつあります。マスコミによる報道の影響から、オンライン診療が急激に認知を伸ばしました。
結果として、患者の医療サービスの消費に対する意識も変わろうとしています。今後、オンラインショッピングに慣れた患者たちは、自らでオンラインでできるもの(足りるもの)、オンラインでは難しいものという線引きを行っていくのではないかと考えます。その結果、それに対応できるクリニックと、できないクリニックの格差、すなわちデジタル機器を使いこなせる(ICT化)かが大きな格差として影を落とす状況が進むのではないかと予想します。
次回は、「ウィズコロナ時代のICT化の3つの視点」を解説します。