クラーク教育のポイント

クラークの教え方は一つではない

 クラークの「教育」について、どうすれば効率的に短期間で教育できるかを約10年間、考えてきました。クラーク教育の難しさは、それぞれのクリニックで確立された運用方法があり、スタッフのレベルも異なるため、教え方は一つではなく、クリニックごとにカスタマイズが必要であることです。

そのため、クラークの候補生たちに、「基本」として教えることと、クリニックやスタッフの状況に合わせて「カスタマイズ」することに分けて、トレーニングメニューをブラッシュアップしてきました。今回は、クラーク教育のポイントについて実際に行っている研修プログラムに基づき解説します。

 

クラーク教育の基本

 クラーク教育の基本は、医師の代わりに電子カルテ入力を行う際の、「カルテ記載に必要なルール」を教えることだと考えています。具体的には、「SOAP」という標準的な記載方式をベースに、主訴(S)とは何か、所見(O)とは何か、評価(A)とは何か、計画(P)とは何かを解説しています。これをまずは解説することで、クラークは実際の「診療行為」と「カルテ記載」を紐づけることが可能となり、診療の流れの中でカルテがどう作られていくかを理解することが可能になります。言い換えれば、診療中に起きている様々な出来事を、SOAPの枠組みの中で振り分ける力をトレーニングしていることとなります。

この基本的な枠組みを理解することで、カルテの記載順番が統一され、最終的にはSOAPの型にとらわれることなく、カルテ記載が可能となると考えます。

 

主訴(S)の理解

患者の「主訴」を理解するためには、問診票の仕組みや役割・目的を知ることが重要だと考えます。医師がどんな目的で問診票を作成し、そこからどんな疾患を浮かび上がらせたいのか。さらに、掘り下げるためにどんな検査・画像が必要かということを解説することで、クラークが問診と主訴、その後の流れを紐づけて考えることが可能になることを期待しています。また、患者の訴えを、「いつ(発生時期)」「どこが(部位)」「どうした(症状)」という順番で記録することにより、後から読みやすいカルテになることも教えています。誰でもいつでも同じような記録になるためには、要素と順番の統一が必要なのです。

 

所見(O)の理解

 「所見」については、診療科ごとに診る部分も傾向も異なるため、大きく診療科ごとの傾向を解説することにしています。これによって大筋は理解できるかもしれませんが、この部分は医師によっても異なる部分であるため、多かれ少なかれカスタマイズが必要な部分と考えています。診察結果、検査結果、画像診断の結果をまずはカルテに記録できるようになることを期待しています。

 

評価(A)の理解

 「評価」については、診療科ごとの主たる疾患を取り上げ、検査や画像をもとに、どんな病名を類推しているかを解説しています。疾患の理解については、最低10の疾患をピックアップして解説しています。その後、現場で新しい病名にであうたびに、増やしていっていただければよいと思います。

 

計画(P)の理解

 「計画」については、患者の疑われる疾患に対して、どのようなアプローチで治療していくかを説明しています。具体的には、処方や処置、注射、点滴、リハビリ、指導などについて理解が進むことを期待しています。この部分も大きく診療科で異なる部分であるため、診療科ごとの解説とともに、カスタマイズが必要な部分だと思います。

また、計画欄には、次回の診察につながるように、「来院日(1週間後、2週間後など)」、「来院時に何を行うか(検査説明)」などを医師が患者に説明した際に、もれなく記録することを徹底しています。

 

カルテの追記・修正の意図を伝えることがクラークを育てる

 クラークの教育について、基本は教えられてもそれはあくまで入り口にすみません。研修を終えてすぐに、医師の期待するレベルでカルテを書くことはできないのです。そのため、最初のうちは、クラークの記載に対して追記や修正が必要になることも多いでしょう。しかしながら、その作業を繰り返すことで、クラークはどんどん成長していきます。成長を促すポイントは、追記するにしても修正するにしても、その意図を合わせて説明することこが大切です。医師がクラークの成長を期待してアドバイスする。その姿勢こそが、クラークの成長に欠かせない教育であると考えます。

mailmaga

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