クラークコラム「スタッフ教育は『知識』『技術』『考え方』」

オンライン資格確認の義務化で受付の在り方が変わる

クリニックの院長にとって、最も遠くで働いているのが「受付スタッフ」です。そのため、日々の診療の流れの中では、受付スタッフの働きぶりを院長が完全に把握するのは困難であると言えるでしょう。

2023年4月から「オンライン資格確認の義務化」されることが発表されました。2024年には従来の保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化するスケジュールも出ています。いま政府は受付の在り方を変えようとしています。

政府が掲げるオンライン資格確認のメリットは、以下の通りです。

  • リアルタイムで保険証の有効期限が確認できる
  • 最新の保険証情報の登録が自動でできる
  • 薬剤情報・特定健診情報が閲覧できる

 

従来の保険証の登録・確認は人為的ミスが生まれる

これまで保険証など受給確認を行うためには、初回時・月頭に患者から保険証を預り、目視によって確認してきました。また、保険情報の入力も手入力か、スキャナで読み込みOCRで変換して登録する方法のいずれかでした。どちらの方法も人間による入力作業か確認作業が必要となり、間違いが発生する可能性はありました。また、保険証の入力・確認ミスによって、返戻の原因となっていました。さらには、保険証を預かることから、保険証の渡し間違いも発生していました。リスクの高い方法であったと言えるでしょう。

この部分については受付スタッフの習熟レベルや、注意力による差が生まれやすく、教育によってその差を埋めるということが行われてきました。

 

普及の過程では、かえって受付の業務増となる

政府の見解によると、オンライン資格確認が完全に普及した世界では、これらの作業が省略化され、確認ミスも登録ミスも患者の渡し間違いもなくなるとされ、返戻が大幅に減少するとされています。そこで、院長は受付の作業が大きく減るのではないかと、当然考えることでしょう。

しかしながら、そこで大きな落とし穴が存在するのです。普及するまでの期間は、マイナ保険証と通常の保険証が混在することで、かえって手間が増えるということを忘れてはならないのです。受付では、これまでの保険証の確認をする前に、マイナ保険証か通常の保険証かの確認が加わることになるのです。

院長は受付の仕事をすべて把握するのが難しいと申し上げました。どうしても断片的にしか把握することは難しいのです。オンライン資格確認を例を挙げても、理想と現実のギャップに苦しむ現場のスタッフの声をしっかり受け止め、想像する必要があるのです。

 

スタッフ教育は、「知識」「技術」「考え方」

 受付スタッフの教育について、診療所のクラーク育成という形式で、約10年間行ってまいりました。その中で、教育とは「知識」と「技術」と「考え方」を三位一体で教えることが大切であると感じています。

「知識」とは、業務を知っていることであり、「技術」とは、業務を実行できることであり、「考え方」とは、その業務の意味をしっかり理解していることなのです。中でも最も大切なのは、「考え方」であると感じています。

例えば、冒頭に挙げた保険証を確認・登録するという業務を例にあげれば、受付スタッフは保険証の確認・登録の仕方を知っており、実行に移すことができるだけでは片手落ちと言えるでしょう。「なぜ、保険証の確認・登録が必要なのか」その意味をしっかりと理解する必要があるのです。例えば、確認・登録が不十分な場合、どんな問題が起こるのか(返戻や患者への確認、修正処理などですね)。後工程を想像できるようになることで、丁寧な対応ができるようになると考えるのです。

 

教育の本質は「考え方」を教えること

 これは、医療クラークを育成する際にも同じことが言えます。「クラーク研修を受けたら受付対応が変わった」という声を先日いただきました。クラーク研修の中で、受付の後工程である、診察、検査、処方、処置といった工程が理解できたことで、受付に対する考え方が変わったのです。クリニック全体の流れを考えて、受付でも行動するようになったのです。

 教育の本質は、「考え方」を教えることです。「なぜ、その業務を行うのか」。それさえ理解していれば、あとは繰り返し練習することで、「知識」と「技術」は、時間がかかるかもしれませんが習得できるのです。

 

mailmaga

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