クラークの心構え

長年、クリニックの医療クラークの育成に関わると、いくつか超えなくてはならないハードルがあることに気づかされます。そこで、今回はクラークの心構えについて話したいと思います。

 

医師の隣に座るだけで緊張する

 クラークは診察室に入り、医師の隣に座ります。このことは当然のことですが、コンバートされた受付スタッフにとっては、とても高いハードルです。外から眺めるのと、実際に内に入るのでは、大きな差があるのです。

診察室の中には、医師と患者、そして看護師がいます。この中にクラークとして配置されるわけですが、最初のうちは「緊張で手が震える」ということをよく聞ききます。緊張は初めてであったり、自信がなかったりするときに起きる現象です。クラークは、初めての場所で、初めての業務ですから緊張して当然でしょう。まして、医師の隣で電子カルテを入力するなど自信が持てるわけもありません。

 

緊張を解くには場所に慣れるしかない

この緊張を解くためには、「慣れ」が必要です。毎日いる「受付」は緊張しないのは、場所も業務も慣れているからに他なりません。初めて受付に入った時は、誰しも緊張したはずです。その時の気持ちを思い出して欲しいのです。

初めての場所に慣れるためには「頻度」と「密度」が大切です。クラークを始める前に、診療補助として、診察室で作業をすることから始めることで「場所」に慣れていきます。診察室内には、受付スタッフでもサポートできる業務が多くあります。患者の呼び込みから、着替えのサポート、子供の介助、機材出し、問診の入力、紹介状や診断書などの書類の準備、次回の予約など、挙げればきりがありません。まずは、これらの業務を診察室内で行い、場所に慣れることから初めてみてはいかがでしょうか。

 

医師と看護師の励ましが緊張を和らげる

緊張を和らげるためには、診療側の「環境作り」も大切です。雰囲気づくりと言っても良いかもしれません。その場所の主である、医師や看護師は、クラークに対して常に優しい声かけをし、「失敗してもフォローするよ」という気持ちを言葉にして欲しいのです。その励ましが、クラークの緊張を徐々に解いて行きます。

 

カルテの責任は医師にある

また、医療クラークが作成したカルテは、医師の指示のもとに行われている業務であり、作成責任は医師にあります。これは法律で決まっていることであり、そのことも事前にクラークに伝えることで、少し肩の荷が降りる気がします。「カルテの責任はすべて医師にある」と宣言することで、クラークはあくまで下書きをしているに過ぎないという気持ちになるのです。

 

自信は事前準備の徹底から生まれる

「自信」はどうすれば持てるようになるのでしょうか。自信を持つためには「事前準備」がとても大切です。例えば、テストの前にしっかり勉強した場合は、緊張なく自信をもってテストに挑むことができたでしょう。逆に、事前準備が不足していると、テストが不安で頭が真っ白になるという経験もされた方もいらっしゃると思います。クラークもこれと同じなのです。しっかりとした事前準備がなければ、自信など生まれるはずもないのです。

 クラークの事前準備としては、私どものカリキュラムの中で、カルテの仕組み、診療の流れ、医療用語、診療報酬の算定の知識、薬や検査の知識などを教えています。基本的な部分は暗記する必要がありますが、これらの知識及び技能はすぐに習得するのは難しく、徐々にしか身に付きません。長い目で見る必要があります。

 

パソコンの習熟が業務に余裕を生む

それよりも、自信を持つためにすぐに始めて欲しいのが、「パソコンを素早く入力できること」です。この技能は、タイピングソフトを利用すれば誰でも短時間で身に着けることが可能です。パソコンが得意になれば、クラーク業務に取り組むうえで大変有利で、業務に余裕が生まれ、自信も少し持てるようになります。

 

問診と診療を紐づけて入力する

また、クラークは医師に代わって、「電子カルテの操作」を担います。クラークは当然、電子カルテの操作方法をマスターする必要があります。これは機能を一通り理解するのは、電子カルテメーカーの操作講習会の中で行い、実践として問診の入力から始めると良いでしょう。その際に、ただ問診を文字として入力するのではなく、問診内容からどんな病気が想定できるか、どんな検査が必要か、どんな治療が行われるかなど、問診と診療を紐づけて入力することが大切です。問診はクラーク業務をレベルアップするための格好の勉強材料なのです。

 

最初のうちは失敗するものという心構え

 クラークにとってのハードルは、場所及び業務に対する緊張と自信の無さが生み出すものです。それを克服するためには「慣れ」や「事前準備」が大切であることを理解いただけたと思います。これらは経験を積まなければならず、時間が案外解決することかもしれません。しかし、ある程度の時期まで緊張し続けるというのは、精神衛生上よくありません。クラークは初めての業務です。最初のうちは失敗するもの、必ず仲間がフォローしてくれると考え、ある程度開き直って取り組むことが最も大切なことなのかもしれません。

 

 

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