コロナ禍のクリニック経営:第1回 患者減、収益減、コスト増という厳しい現実
2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、11月、12月と再び大きな拡大となっており、第三波を迎えていると言えるでしょう。ワクチンの開発が成功し、日本でも来年2月にはワクチン接種が始まるとはいえ、先が見えないウィズコロナの時代はしばらく続くことが予想されます。
コロナ禍で、クリニックを取り巻く環境は大きく変化しています。感染症を恐れる患者が増え「外来の受診控え」を生み出し、混雑した待合室は密だと敬遠され、患者の来院減少に悩む先生方も多くいらっしゃると思われます。
このような状況下で、クリニック経営は「患者減、収益源、コスト増」という難しい局面を迎えています。患者がなかなか増えない中で、それに合わせて人員整理もできず、苦しむクリニックはどのような変化をしていかなければならないのでしょうか。
今回から数回にわたり、コロナ禍におけるICT化について、考えていきたいと思います。
医療分野のクラウド化がICTを複雑に
最近、クリニックのICT化の相談が増えています。「どれを買ったらよいのかわからない」「クラウドはどうなの?」「この見積りは適正?」など、その相談内容は様々です。しかし、共通的な認識として、クリニックのICT化がより複雑になていることは間違いありません。複雑化の起因は、2010年の「医療分野のクラウド解禁」ではないかと考えます。クラウド化が進むことで、開発環境が整備され、多くのカテゴリーのシステムが生まれました。電子カルテと連携する「周辺システム」が年々増加し、クリニックのICT化の検討範囲が拡大を続けているのです。
働き方改革、新型コロナウイルスの感染拡大の影響
また、2019年から政府は「働き方改革」を打ち出し、有給休暇の消化や残業の上限規制、正社員と非正規社員の待遇格差の是正など、クリニック経営にも大きな影響をもたらしています。クリニックは典型的な労働集約型産業であり、業務効率化やコスト削減の余地が大きいと言われています。現在、「オペレーション全般の見直し」が重要な課題となっています。
さらに、2020年初頭から始まった「新型コロナウイルス感染拡大」の影響で、クリニックは徹底的な感染症対策が必要となり、クリニックに患者が安心して来院できるようにリニューアルが急務になっています。ICTを活用して、業務効率化を図り、感染症対策をおこなうという難題に取り組む必要が出ていているのです。
かつてのクリニックIT化はデジタル化戦略
クリニックがICT化に取り組む際、まず何から考えたらよいのでしょうか。
従来、クリニックのICT化は、医事会計ソフト(レセコン)に始まり、電子カルテ、PACS(画像ファイリング)と発展を遂げてきました。これらは院内のデジタル化を進める動きとまとめられます。一昔前であれば、クリニックのIT化は、電子カルテを中心とした整備を考えるだけで良く、非常にシンプルなものであったと言えるでしょう。
次回は、ICT化を考える上での前提条件として、「ウィズコロナによる変化」を解説します。