医療DX

電子カルテ標準化のゆくえ

厚生労働省は2023年9月11日に「健康・医療・介護情報利活用検討会 医療等情報利活用ワーキンググループ」を開催しました。その中で、「電子カルテ情報共有サービス(仮称)」の構想について説明がありましたので、今回はその内容を解説します。

 

電子カルテ情報共有サービスとは?

「電子カルテ情報共有サービス」とは、現在普及が進められている「オンライン資格確認ネットワーク」を利用して、3文書6情報(※)を共有しようとする政府の医療DXプロジェクトのひとつです。同サービスにおいては、①文書情報を医療機関等が電子上で送受信できるサービス②全国の医療機関等で患者の電子カルテ情報(6情報)を閲覧できるサービス③本人等が、自身の電子カルテ情報(6情報)を閲覧・活用できるサービスを提供するとしています。
(※)3文書:①健康診断結果報告書②診療情報提供書③退院時サマリ、6情報:①傷病名②アレルギー③感染症④薬剤禁忌⑤検査⑥処方

 

健康診断結果報告書の取り扱いについて

 3文書の1つである「健康診断結果報告書」については、本人・実施主体に現在紙で結果が送られる場合が多く、結果取得までの時間がかかり、データ化するための事務負担が発生していることを課題と挙げています。そこで、電子カルテ情報共有サービスにおいて、健診機関等から迅速に健康診断結果報告書を共有し、閲覧することが技術的に可能となることで、メリットが得られることから、同サービス稼働時の実装を目指すとしています。その際、対象となる健診とは特定健診や後期高齢者健診、事業者健診、人間ドック等とし、今後検討・調整していくとしています。当面の対象実施機関としては、医療機関や医療機関に併設の健診機関が例示されています。

 

患者サマリー(Patient Summary)について

 電子カルテ情報の「6情報」をマイナポータル上で閲覧可能とする仕組みを構築することに合わせて、情報を整理し患者にとってわかりやすくまとめて表示してはどうかとの意見が出されています。情報の利用シーンとしては、「患者が自分の病態を把握し、医師からアドバイスを受ける」「患者が他院に受診する際に医療者に情報共有する」「救急搬送時に医療機関に情報提供する」が挙げられています。

 

処方情報について

 2023年1月より「電子処方箋サービス」が開始されています。処方情報に関する論点としては、レスポンスや重複投薬チェック、医療機関側の負担軽減の観点から、電子処方箋管理サービスで院内処方を取り扱うことを基本とするとしています。現在の院外処方のみから院内処方についても取り扱うことを示唆しています。そのためには、電子カルテ情報共有サービスで処方情報を取り扱う目的を整理し、必要であれば電子処方箋管理サービス等から変換するなどして取り扱ってはどうかとしています。

 

マイナポータルの同意機能の権限設定について

 今後、オンライン資格確認において、共有する情報が増えていくことを受けて、患者の同意に係る時間短縮を図るために、各医療機関単位でマイナポータルでの同意権限の入力や前回同意情報をもとに設定を可能とする案が示されています。これを利用することで、前回同意していて今回も変更がない場合は、同意をスキップできるような機能が付与されることになります。

 

システムベンダ向け技術解説書

 電子カルテ情報共有サービスを進めるためには、電子カルテシステムや健診システムの改修が必要になります。そこで、厚労省は2024年1月を目処に「医療機関システムベンダ向けに技術解説書」を公開する予定としています。同解説書では、電子カルテ情報共有サービスを利用するにあたっての前提事項として、

  • FHIR記述仕様書に準拠したFHIR規格(JSON形式)で記述すること
  • 標準コードを用いること
  • 最小限の負担で且つタイムリーに情報共有できること

を挙げています。

(参考資料)
電子カルテ情報共有サービスに対応した電子カルテシステム等を提供するシステムベンダ向け技術解説書(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001144750.pdf

 

電子カルテシステムの改修、新規導入に係る補助金

 政府は、電子カルテ情報共有サービスの開始時期を2025年と想定しています。それに向けて、各電子カルテベンダーは、現在の電子カルテシステムに対して、3文書6情報を標準形式に書き出して、政府の用意するデータベースに登録できる機能(HL7FHIR)を付加する必要があります。それに合わせて、過去の例に則れば、電子カルテシステムの改修並びに、新規に電子カルテシステムの導入をするための補助金が準備されるのではないかと考えます。

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