令和6年度診療報酬改定のポイント解説

2月14日に行われた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、令和6年度診療報酬改定の答申が行われました。答申が出たことにより、改定項目が大枠で確定したことになります。そこで、今回は主にクリニックにおいて重要と考えられる項目に絞り、解説します。

 

初・再診料の引き上げ

外来診療において感染防止対策を日常的に講じることが必要となっていること、職員の賃上げを実施すること等の観点から、初診料が3点、再診料が2点、それぞれ引き上げとなっています。

 

外来・在宅ベースアップ評価料()()の新設

外来医療または在宅医療を実施している医療機関において、勤務する看護師など医療関係職種の賃金の改善を実施している場合の評価として「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」が新設されます。初診時に6点、再診時に2点、訪問診療時の同一建物居住者以外の場合は28点、同一建物居住者の場合は7点となります。

さらに、ベースアップ評価料(Ⅰ)では、賃上げが十分ではない無床診療所への救済措置として、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」が新設されます。初診又は訪問診療を行った場合は8点、再診時は1点となりますが、同点数は8段階に区分されており、最大で初診又は訪問診療を行った場合は64点、再診時は8点となります。

 

医療情報・システム基盤整備体制充実加算から医療情報取得加算へ

医療情報・システム基盤整備体制充実加算については、オンライン資格確認の導入が2023年4月に原則義務化されたことを踏まえ、体制整備に係る評価から、情報取得・活用にかかる評価へ変更され、名称も「医療情報取得加算」に見直されています。

 

医療DX 推進体制整備加算の新設

オンライン資格確認により取得した診療情報・薬剤情報を実際に診療に活用可能な体制を整備し、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスを導入し、質の高い医療を提供するため医療DX に対応する体制を確保している場合の評価として、「医療DX推進体制整備加算(8点)」を新設するとしています。なお、電子処方箋ならびに電子カルテ情報サービス、マイナ保険証の実績については経過措置が設けられています。

 

情報通信機器を用いた診療 

情報通信機器を用いた診療については、「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料(いわゆるCPAP)」と「小児特定疾患カウンセリング料」「通院精神療法」の情報通信機器を用いて行った場合の評価が新設されています。

 

生活習慣病管理料の見直しと特定疾患の生活習慣病の除外

生活習慣病の管理については、特定疾患療養管理料の対象疾患から、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧)を除外することで、生活習慣病管理料に一本化することとなりました。また、この対象疾患の変更は「特定疾患処方管理加算」についても同様となっています。さらに「特定疾患処方管理加算」については、特定疾患処方管理加算1を廃止するとともに、特定疾患処方管理加算2の評価を見直し、28日超処方だけではなく、リフィル処方箋を発行した場合も算定が可能となります。

一方、「生活習慣病管理料」については、検査等を含む生活習慣病管理料(Ⅰ)と、検査等を含まない生活習慣病管理料(Ⅱ)に区分され、(Ⅰ)は一律40点引き上げられ、(Ⅱ)は333点となりました。

また、加算については、血糖自己測定指導加算(500点)、外来データ提出加算(50点)が設けられています。

 

短期滞在手術等基本料1の見直し

短期滞在手術等基本料1(日帰り)については、対象手術等の入院外での実施状況を踏まえて変更が行われています。従来の麻酔の有無による2区分の評価から、「主として入院で実施している手術」と、それ以外に分け、それ以外については約半分の点数となっています。 

今回、入院で実施している手術としては20項目に絞られており、そのリストから漏れた手術は点数が半減となってしまうことになります。

 

精神医療

「通院・在宅精神療法」について、質の高い精神医療の提供を推進するために、60分以上の精神保健指定医による場合を560点から600点に引き上げ、30分未満の精神保健指定医による場合を330点から315点に引き下げています。

また、精神疾患の早期発見、早期診療を実施する体制を有する医療機関が精神療法を行った場合の評価として「早期診療体制充実加算」が新設されています。また、情報通信機器を用いて通院精神療法を実施した場合についても新たな評価が行われています。

 

在医総管・施設総管の見直し

在宅医療については、「在宅時医学総合管理料」及び「施設入居時等医学総合管理料」が従来の3区分から6区分に増え、単一建物診療患者の数が「10 人以上19 人以下」「20 人以上49 人以下」「50 人以上」の場合の評価が新設されることになり、点数も一律で引き下げられています。

一方、他の保険医療機関等の関係職種がICT を用いて記録した患者に係る診療情報等を活用した上で、医師が計画的な医学管理を行った場合の評価として、「在宅医療情報連携加算(100点)」が在宅時医学総合管理料及び施設入居時等医学総合管理料の加算として新設されます。

 

処方箋料等の見直し

医療DX(電子処方箋)の取組や、相変わらず医薬品の安定供給がされていないことを受け、処方等に係る評価の再編が行われています。「一般名処方加算」については、医薬品の供給不足の状況が続いていることから、供給不足等の場合における治療計画の見直しに対応できる体制の整備、患者への説明、院内掲示にかかる要件を新たに設けるとともに、評価が一律3点引き上げられています。

また、医療DX の推進による効率的な処方体系の整備が進められていること並びに 一般名処方加算、後発医薬品使用体制加算及び外来後発医薬品使用体制加算の見直しに伴い、薬剤情報提供料が6点引き下げられ、処方箋料も一律8点の引き下げとなっています。

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