令和6年度診療報酬改定における特定疾患療養管理料の変更の衝撃

令和6年度の診療報酬改定の短冊が1月26日に公表され、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)が「特定疾患」から除外されることが決まりました。その影響は、「特定疾患療養管理料」「特定疾患処方管理加算」の算定が大幅に減少することを意味します。

厚労省の調査によると、特定疾患療養管理料の算定において、約半数は生活習慣病が主病とされており、それらの患者は今後、生活習慣病管理料の算定に移行する必要が出てくることになります。

 

特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の違い

そもそも特定疾患療養管理料と生活習慣病管理料の大きな違いは、算定の際の医療機関側の手間にあります。特定疾患療養管理料は、治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行い、管理の要点をカルテに記載することが求められています。一方、生活習慣病管理料は、服薬、運動、休養、栄養、喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行う旨、患者に対して療養計画書により丁寧に説明を行い、患者の同意を得るとともに、計画書に患者の署名を受けた場合に算定できるとされています。書類の作成、患者の同意、署名が必要になるため、医療機関にとっては大きな手間が発生することになります。

 

生活習慣病管理料の変更点

 生活習慣病管理料の算定要件は、令和6年度改定から以下のような変更が行われる予定です。

①生活習慣病管理料における療養計画書を簡素化するとともに、令和7年から運用開始される予定の電子カルテ情報共有サービスを活用する場合、血液検査項目についての記載を不要とする。あわせて、療養計画書について、患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書の記載事項を入力した場合、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす。

②診療ガイドライン等を参考として疾病管理を行うことを要件とする。

③生活習慣病の診療の実態を踏まえ、少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止する(実質、概ね4か月に1回で良くなる)。

④歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種と連携することを望ましい要件とするとともに、糖尿病患者に対して歯科受診を推奨することを要件とする(現在は眼科受診を推奨することが要件としてある)。

⑤長期処方・リフィル処方の院内掲示が必要となる。

⑥外来管理加算の併算定ができなくなる。

⑦生活習慣病管理料Ⅰと生活習慣病管理料Ⅱ(検査等を包括しない場合)に分かれる。

 

療養計画書の作成

生活習慣病管理料の算定に向けては、療養計画書の作成並びに患者の同意プロセスを少なくとも4か月に1回は行う必要があります。

療養計画書の記載に必要な項目は、現在の様式9を見ると、患者氏名、性別、生年月日、主病、検査・問診、食事、運動、たばこ、その他、服薬指導、療養を行うに当たっての問題点、他の施設の利用状況について、特定健診の受診の有無、特定保健指導の利用の有無、保険者からの情報提供の求めに対する協力の有無、患者署名、医師氏名(捺印)、栄養士など担当者の氏名などが必要になります。

同書類は初回に作成すれば、2回目以降は変更点だけ修正すれば良いことになるとは思われますが、作成にかなりの時間を要することになると思われます。また、4か月に1回、身体測定および検査(体重、BMI、腹囲、血液検査、血圧、運動負荷心電図など)が必要なことも医療機関にとっては負担と感じられるかもしれません。

 

 

療養計画書の作成に係るタスクシフティング

 療養計画書の作成に当たっては、看護師、栄養士、医療クラークが協力して、情報収集、書類の下書きを行い、医師に最終確認を受け、医師が患者の同意・署名を得る流れになります。いままで以上に、関係職種を繋ぐ役割として、医療クラークの役割が重要になるのではないかと考えます。

mailmaga

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