気をつけたい算定漏れ~痛みに対する注射編~
医療事務の基礎知識(7)
今回は、整形外科等で行われる注射の種類と算定についてのお話です。
通常の注射料は、皮下、筋肉内注射や静脈内注射または点滴注射が一般的ですが、痛みを取るための注射は、このような点滴注射等と同じような実施料(手技料)での算定はできないので間違えないようにしてください。
整形外科等では、首や肩、腰や膝などが痛いという患者様が多く、注射によって痛みを和らげる治療を行うことがあります。この時、圧痛点(痛いところ)に直接注射をすることがありますが、使用された薬剤によって、注射の実施料(手技料)が変わってきます。使用した薬剤が局所麻酔剤、または局所麻酔剤を主剤とする薬剤の場合は、50麻酔の項目の『トリガーポイント注射』(1日につき1回 80点)で算定します。局所麻酔剤が含まれていなかったら50麻酔の項目の『神経幹内注射』(25点)での算定になります。
よく見かける間違いとしては、キシロカインなどの局麻剤が含まれていないのに、トリガーポイント注射で算定されていたり、または局麻剤が含まれているのに31皮下、筋肉内注射(20点)で算定されていたりということがあります。
ここで少し専門的なお話になります。上記でトリガーポイント注射が算定できるのは、局所麻酔剤が含まれていることと説明させていただきましたが、例外もあります。
・ネオビタカイン注
・ビーセルファ注
この2剤は解熱鎮痛鎮静剤で、局麻剤ではありませんがトリガーポイント注射が認められる薬剤です。また消炎鎮痛剤でよく使われるノイロトロピン注射液は、単剤ではトリガーポイント注射として認められませんので注意してください。
神経ブロック
この他にも、痛みが伝わらないように遮断するという神経ブロック注射もあります。点数表を見るとL100神経ブロック(局所麻酔剤又はボツリヌス毒素使用)と、L101神経ブロック(神経破壊剤又は高周波凝固法使用)に分かれていますが、両方に同じ名称の項目があり点数は異なっています。これも使用した薬剤によって点数が変わりますので注意が必要です。
関節腔内注射
痛いといわれる関節内に注射をされた場合には33その他の注射の『関節腔内注射』です。
クリニック内で「肩の注射」や「膝の注射」といわれるのはこちらです。
関節1個所ごとに1日につき80点算定できます。
・33(注射の項目の)関節腔内注射 80点
・40(処置の項目の)関節穿刺 100点
・60(検査の項目の)関節穿刺 100点
この3項目は、同一日に同じ関節に行った場合、どれか1項目しか算定できないルールになっています。これは実際のやり方を知っていると理解しやすいと思いますので簡単に説明します。
関節内に1回針を刺して、関節内に溜まっている水を抜きます(処置項目の関節穿刺)。針はそのままで注射器だけを取り外し、注射薬剤が入っている注射器に替えてその針に取り付け注射をします(注射項目の関節腔内注射)。そして抜いた水を検査に出します(検査項目の関節穿刺)。この時、針を刺したのは最初の1回だけですね。ここでの注意点は、このように同じ関節の場合は針を1回刺すだけで3項目すべてできてしまうため、針を刺す技術料に当たる点数は、どれか1項目しか算定できないということです。
※どれで算定された場合でも、使用した注射薬剤料は算定できます。
ここでも損をしないポイント
1つの関節に処置の関節穿刺と、注射の関節腔内注射を行った場合には、技術料は処置の関節穿刺で算定した方が点数は高いですね。この時、使用した注射薬剤料も算定できますので忘れずに算定してください。
薬剤料のみを注射の項目で算定しても構いませんし、処置料のところで、処置の薬剤料として算定しても問題ありません。
病名にも注意して!
もうひとつ、関節腔内注射でよく使われる『アルツ』というお薬は、病名が限られています。
・肩関節周囲炎
・変形性膝関節症
・関節リウマチにおける膝関節痛
これ以外は対象外になりますので、お気をつけください。
このように、痛みに対する注射の場合は、実施料もさまざまですし、使用した薬剤によっても算定する点数が変わってきますので、注意してカルテを見たり、医師の指示を聞いたりするようにしてください。
執筆:日本医業総研