クリニックのデジタルマーケティング
長引くコロナ禍の影響で、クリニックの「マーケティング」の在り方が変わろうとしています。クリニックにおいても、待ちの戦略(プル型)から、クリニック自身が発信し、患者を集める攻めの戦略(プッシュ型)に取り組む必要が出てきているのです。
「外来減少時代」の到来
コロナ禍において、我が国では「新しい生活様式」が定着し、マスク着用、手指消毒、3密(密集、密閉、密接)回避の行動が当たり前となっています。感染を避けようとする患者心理により、できるだけ受診を控え、来院頻度が減少し、新型コロナ以外の患者の減少が進んでいます。
多くのクリニックでは、患者にとって安心安全な受診環境を整えるため、感染防止策を徹底しています。受付にアクリルのパーテーションを設置し、スタッフはマスク、フェイスシールド、手袋をつけ、待合室の席を離すなど、3密対策を徹底しています。
感染対策としてのデジタルツール
そのような中、待合室の混雑を避ける方法として、「予約システム」の導入が進んでいます。予約システムを導入することで、患者は自らの時間が近づいてから来院するという行動に変わり、待合室で長く待つことから回避できます。
いまでは、ホームページの待ち状況の表示が重要な目安となっています。感染を避けようと考える患者は、従来の「長い待ち時間」や「混雑した待合室」を嫌い、できるだけクリニックでの滞在時間を短縮したいという考えが加速しているのです。
患者にどう伝えるか?
「待ち時間」に関する改善要望は、以前から患者ニーズとしてあったものであり、コロナ禍でさらに顕在化したのだと考えられます。患者は、クリニックの混雑状況を確認する手段として「とりあえず電話」というかたちで表出していることが電話が増えている原因です。
クリニックの感染防止策は、患者に正しい情報として届かなければ意味はありません。例えば、患者から「混雑状況」に関する電話が多くかかっては、受付はその対応に追われてしまいます。しかしながら、クリニックはホームページに混雑状況を載せているのに、相変わらず、電話が多いのはなぜでしょうか。それは、ホームページのメディアとしての性質に課題があるためです。
「プル型」と「プッシュ型」
ホームページは、患者自らが検索エンジンなどを介してアクセスして初めて情報を受け取ることが可能になります。クリニックから患者に直接働きかけることが難しいメディアです。これは「プル型メディア」と呼ばれます。ホームページにいくら混雑状況を載せても、患者がそれを見なければ、情報は届いていないことになります。
そこで注目されているのが、「プッシュ型メディア」としてのSNS(LINE、Instagram、Twitter、YouTubeなど)の活用です。SNSの場合、クリニックは登録された患者に対して、ダイレクトに情報提供が行えます。近年スマホが急激に普及し、長引くコロナ禍の自粛生活により、サイトにアクセスする時間が増大しています。いま若者の間では、検索エンジンよりもSNS内の検索機能で情報収集を行うケースが増えてきています。また、コロナ禍でクリニックのメインターゲット層である「シニア」のスマホ利用率も高まっています。
ホームページとSNSを組み合わせる
クリニックが患者に直接情報を届けたいと考えた場合、SNSが有効だと考えるクリニックが増えています。SNSとホームページを連携させることは、一般企業では当たり前の戦略となっています。ホームページは検索エンジンからのユーザー閲覧を待つ「プル型メディア」であるのに対し、SNSはフォロワーに対し、好きなタイミングで情報発信することができる「プッシュ型メディア」です。この両者の特性を組み合わせることで、マーケティング効果を最大化しようとする戦略です。また、オンライン診療や予約システムの入り口として、SNS(特にLINE)を活用する動きも活発化しています。
新型コロナの感染拡大、そしてスマホの普及に伴うデジタル化の進展、感染対策によってクリニックの患者減少が顕在化する状況下で、医療界にも新たなマーケティング手法としてSNSの活用が始まっています。この流れは一過性なものではなく、コロナが終息に向かったとしても、自粛生活の中で情報をインターネットに求める患者が増えたという現実により、クリニックの主流のマーケティング手法として定着して