クラーク導入研修が院内のコミュニケーションを良くしている
医療機関のスタッフに「クラークの研修」を行うようになって、早いもので7年目になります。おかげさまで、延べ150件を超える医療機関様の手伝いをさせていただきました。「クラーク導入は、院内のコミュニケーションを良くする」効果があると考えています。今回は、そのことについて事例を交えてご紹介します。
1/3の病院で医療クラークが導入されている
クラークは、病院では「医師事務作業補助者」と呼ばれ、クラーク配置に対する評価が診療報酬点数に盛り込まれています。現在約2700件の病院導入されており、全病院の3分の1に上ります。クラーク導入の効果は、厚労省が行ったアンケートの結果で「勤務医の負担軽減につながっている」と評価されています。
一方、診療所では点数の評価はありませんが、「開業医の負担軽減」や「診療スピードアップ」を目的に導入が少しずつ進んでいます。今後も導入が進むことが予想されます。
電子カルテは診療行為と診療報酬をつなぐツール
電子カルテのクラーク研修は、カルテの左側(経過欄)と右側(オーダー欄)を一致させることをメインとしています。
レセコン時代は紙カルテに書かれた内容を医事スタッフが診療報酬点数に置き換えてレセコンに入力していました。カルテの情報が不足すれば、当然医事スタッフは読み取れませんので、本来算定できる点数が漏れてしまいます。つまり、カルテとは診療行為と診療報酬を結びつけるコミュニケーション媒体であったわけです。
レセコンから電子カルテになれば、カルテの左側も右側も医師が担当するようになります。医事スタッフはその結果をチェックする役割に変わります。医師が診療報酬点数の理解が十分であれば、医事スタッフは素人でも務まります。一方で、医師の理解が十分でなければ、医事スタッフはしっかりと確認する必要があるのです。ここでも診察室と受付を電子カルテが結び付けているのです。
同じ場所で業務を行うことでコミュニケーションレベルは向上する
電子カルテのクラーク運用では、医師は診療を担当し、クラークは診療内容からカルテ記載を担当するようになります。診療現場で、実際の目で見て、耳で聞いた内容をカルテに書き写すことになり、診療行為と診療報酬の結びつきは非常に強くなります。また、診察室と受付と別れていた場所が一つになることで、コミュニケーションが良くなるのです。正しいカルテが正しいレセプトを作るという公式に基づき、同じベクトルで業務にあたることで、診療所と受付で生まれていたコミュニケーションギャップがゼロに近づくのです。
さらには、医師、看護師、クラークの3職種が同じ場所で業務を行うことで、互いの業務が見える化し、助け合いの精神のもと協力体制が高まっていき、組織として強固な体制が整っていくのです。
コミュニケーションの本質
電子カルテのクラーク運用を実現するためには、実際の現場で状況に合わせてシミュレーションを繰り返すことが近道です。頭で考えていることが、そのまま現場でも正しいとは限りません。現場で実際に行ってみて微調整して、初めて正解にたどり着けるのです。百聞は一見に如かず、百見は一体験に如かず、実際にやって見なくては分からないことはたくさんあるのです。また、これこそが本質なのかもしれませんが、クラーク研修は研修という形態をとっていますが、実は業務フローの見直しを全スタッフで考えることにつながっています。つまり、これまで慣れ親しんできたフローを捨て、新しいフローを作り出すプロセスこそが、組織のコミュニケーションを向上させ、組織の結びつきを強めることにつながっているのだと思います。