クラークを導入しても効率が上がらないと思われる方への処方せん

クラーク運用のススメ(17)

「クラークを導入しても効率があがらない」という相談が最近増えています。なぜ、効率が上がらないのでしょうか。

それは、「医師とクラークの役割分担が明確ではない」「医師がクラークを十分信用していない」「クラークがいつまでたっても育たない」といった理由が考えられます。

今回は、それぞれの原因を明確にし、改善する方法をお教えします。

1 医師とクラークの役割分担が明確ではない

カルテの記載の中で、「どの部分を医師が」、「どの部分をクラークが」という決まりごとがありますでしょうか。なんとなくクラークを隣に触らせ、医師と患者が話している内容を入力するだけでは、劇的な効率化は図れません。

まずは、カルテを記事部分とコスト部分に分け、さらに記事部分をS・O・A・Pに分解し、コスト部分を処方・処置・検査・画像・指導に分解してみましょう。次に、それぞれについて誰が担当するのかを考えてみるのです。

役割分担の方法は、診療科やクリニックの診療スタイルによって異なりますので、「これが正解」というものはありません。役割分担の注意点としては、クラークの力量で「できる、できない」を判断するのではなく、今後練習していくことで成長し「できるようになる」と、能力を未来進行形で考えることです。また、最初は任せないが、慣れてきたら任せる範囲を広げていき、最終的には全部任せられるようなマイルストーンをおいて計画することも大切です。

2 医師がクラークを十分信用していない

電子カルテのクラーク運用は、医師とクラークの信頼関係が最も重要です。この信頼関係がなければ、クラークの入力したカルテを常に疑いのまなざしで確認しなくてはならず、間違いを発見するたびに、がっかりしたり、怒りを感じたりと感情が混ざってしまいます。これではいつまでたっても、信頼関係は構築できません。

信頼関係は一朝一夕には構築できません。日々の一歩一歩が大切なのです。少し精神論にはなりますが、クラークが最初のうちはできなくても、励ましながら、褒めながら、認めながら、一歩一歩育ててください。特に、できたことを褒める(承認する)という行為は、信頼関係構築の上で非常に大切です。といっても、「なかなか褒められないんだよね。悪いところばかり目について」という先生もいらっしゃるかもしれません。そういった場合、スモールゴールを設定して、ゴールをクリアしたら、ご褒美として「褒める」といった、小さな成功を承認するスタイルから始めてはどうでしょうか。

わたしの経験上、「信頼関係」と「効率化によるスピードアップ」は相関関係にあるようです。まずは任せてみる、上手く行けば褒め、信頼する、任せる範囲を広げる。この繰り返しです。

 

3 クラークがいつまでたっても育たない

クラークを導入している医療機関に訪問すると、クラークが入力したカルテを医師がかなり手直しをしているケースを見かけます。場合によっては、全部消して、一から入力し直しているなんてこともあるかもしれません。その際、ドクターは心の中で、「自分が入力した方が早いな」「いつになったら育つのだろう」と呟いていることでしょう。一方、クラークは心の中で、「わたしは役に立っているのだろうか」「先生の期待するレベルが分からない」「全部消されたらショック」と思っていることでしょう。

実はこの両者の考え方にこそ問題があるのです。医師が期待するカルテ像を提示し、それに近づくためにクラークが努力するという構図に変わらない限り、成長は期待できないのです。まず医師は、カルテの完成形を明確にし、その思考や行動プロセスを整理してクラークに伝える必要があるのです。これを行わない限り、クラークの成長はありません。

この作業は自らの業務をなんとなくというあやふやなものから、AだからBという論理的なものに変える必要があります。なかなか一人でやるのは難しいと思いますので、我々のような運用改善コンサルタントの出番があるのだと思います。

執筆:大西

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