「令和4年度診療報酬改定とデジタル化」

 令和4年度診療報酬改定の「答申書」が2022年2月9日に出されました。答申書は、改定項目の中でも中心的な変更点をまとめたものとなります。詳細は、3月初旬の告示をもって明らかになります。今回の改定は、コロナ禍で明らかとなった「デジタル化の遅れ」を強く意識した改定内容となっており、過去に例のないほど、デジタル化、ICT化に関する内容が盛り込まれています。

 

オンライン資格確認の評価

2021年10月より本格稼働した「オンライン資格確認」は、医療提供体制における情報基盤であり、今夏に予定される「電子処方箋の開始」に向けても普及が急務であるため、政府はオンライン資格確認の普及を進めるための点数を新設することとなりました。

「算定要件」としては、施設基準(オンライン請求/オンライン資格確認/院内掲示)を満たす病院・クリニックを受診した患者に対し、オンライン資格確認により、患者に係る診療情報等(薬剤情報・特定健診情報)を取得した上で診療を行った場合に、「電子的保健医療情報活用加算」として、月1回に限りそれぞれ所定点数(初再診料等)に加算するとしています。クリニックにおいては、初・再診料を算定する患者にもれなく、7点ないし4点が加算されることとなります。

 また、初診料限定となりますが、オンライン資格確認により、患者に係る診療情報等の取得が困難な場合や、他の保険医療機関から患者に係る診療情報等の提供を受けた場合などは、令和6年3月31日までの間に限り、「3点」を所定点数に加算するとしています。現時点で、普及がそれほど進んでいない状況を考えて、一部、救済措置が用意されています。

 

オンライン診療

 2020年4月の「0410通知」により、「オンライン診療」はコロナ禍の特例措置として、初診からの実施をはじめ、大幅に規制が緩和された状態で運用されてきました。次期改定では、オンライン診療に係る特例措置をどこまで恒常化できるかが焦点となっていました。

令和4年度改定では、オンライン診療料を廃止し、初診料・再診料に組み込むという設計変更を行い、コロナ禍の規制緩和を踏襲する形で恒常化されることとなりました。

 オンラインでの初診については、「初診料(情報通信機器を用いた場合)251点」となり、現在の電話等初診(214点)より37点引き上げています。また、オンラインでの再診についても「再診料(情報通信機器を用いた場合)73点」とし、オンライン診療料という項目自体を廃止しました。

「算定要件」としては、厚生局への事前の届け出をした上で、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って診療を行った場合に算定するとしています。また、診療の場所も「原則として、保険医療機関に所属する保険医が保険医療機関内で実施すること」としながら、「保険医療機関外で情報通信機器を用いた診療を実施する場合であっても、当該指針に沿った適切な診療が行われるもの」とし、「医療機関外での診療」も例外的に認めています。 

対象患者についても、「同指針」の「オンライン診療の初診に適さない症状」等を踏まえて診療を行うとし、規制緩和を進めています。

オンライン服薬指導についても、本来オンライン診療の後でなければ行えなかったものを、外来の後でも行えるようにしています。その他、医学管理料の算定も条件付きで緩和しています。

 政府は、コロナ禍でニーズが高まった「オンライン診療」を恒常化するために、初再診料の一部として再評価し、これまでの規制を大幅に緩和したことで、オンライン診療の普及を進めようとしています。

 

その他デジタル関連

その他、デジタル化に関連する項目としては、「オンライン会議システム」の活用が様々な場面で可能とされています。医療の世界でも、コロナ禍で急速に普及した「オンラインミーティング」が当たり前になると考えます。

また、データヘルス改革を進めたい政府は、「データ提出加算」に係る届出を要件とする入院料の範囲を慢性期に拡大し、さらには外来においても、在宅時医学管理料や生活習慣病管理料、疾患別リハビリなどでデータ提出を求めています。さらに、地域間の医療機関間の情報共有・連携が効率的・効果的に行われるよう「標準規格(HL7 FIHR)」による報告を求めています。今後もデータ提出の流れはさらに拡大することを予想します。

 

サイバーセキュリティ、BCP

2021年に起きた徳島県の病院でのサイバーテロ攻撃により、電子カルテが動かず、診療再開までに2カ月以上を要した事件を受けて、病院では「非常時に備えたサイバーセキュリティ対策の整備」が要件として盛り込まれています。

訪問看護ステーションにおいては、「感染症や災害が発生した場合であっても、必要な訪問看護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、訪問看護ステーションにおける業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等」を義務化するとしています。

サイバーテロ、新興感染症、地震・大雨などの自然災害は、いつ何時、どこにでも起こり得る問題です。そのような状況を鑑み、政府はまずは病院や訪問看護ステーションに対して、サイバーセキュリティやBCP(事業継続計画)の策定が盛り込まれました。クリニックにおいても対岸の火事と考えずに、今一度サイバーセキュリティやBCPについて検討してみてはいかがでしょうか。

mailmaga

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