現地研修はクリニックの一体感を生み出す

クラーク運用の現場から(6)

ある内科クリニックに訪問して行った研修のひとコマをご紹介しましょう。

この日のカリキュラムは、クラークの心構えやクラークの動き方などの講義を少し行ってから、カルテ作成トレーニング、そして、電子カルテの代行入力トレーニングを行う予定です。

「皆さん、本日は4時間の研修ですが、よろしくお願いします」と挨拶すると、受講するスタッフさんから「え~、長いな~、眠くならないかな・・・」という心の声が聞こえてきそうな雰囲気です。

電子カルテの代行入力トレーニング

講義・カルテ作成と順調に進み、研修のクライマックスとなる電子カルテの代行入力が始まりました。

「さて、いまから医師の隣で、電子カルテを入力してもらいます!」

スタッフさんたちから、「やったことないけど、いきなりできるかしら」「先生の横は緊張するな・・・」「パソコン苦手だから無理です」という本音が、もう心の声ではなく言葉となって漏れています。

私は、「大丈夫、先生が入力できるんだから、皆さんでもできますよ。皆さんは先生よりはるかに若いんですから。食わず嫌いはいけません。まずはやってみましょう」と勇気づけ、参加を促します。

スタッフさんはしぶしぶクラーク席に座り、ひとりひとり代行入力の練習を行っていきます。

「電子カルテは、医師が診療しながらでも入力できるように、極力操作を簡単にしています。だからキーボードが早く打てなくても大丈夫です。それでは、今日は風邪の患者さんが来たと想定してやってみましょう」

カルテをイメージして診療する

代行入力のロールプレイング研修がスタートしました。

「今日はどうされましたか」「風邪だと思うんですけど」「症状は?」「喉が痛いんです、それと咳が出るんです。熱もあるようです。測ったら39度でした」「そうですか。インフルエンザの予防接種は・・・」

医師と患者さん役のやり取りを聞きながら、クラーク席で入力が進みます。

「先生、すいません。もう少しはっきり話していただけませんか。もごもご言われても聞き取れません」と、遠慮のないお願いが出て、スタッフからくすくす笑う声が。

「ごめん、ごめん。はっきり話すね」優しい先生は、すまなそうに応えます。

「ここでアドバイスです。医師ははっきり話していただきたいのですが、もうひとつお願いしたいことがあります。患者さんのやり取りのうち、カルテに残してほしい内容を復唱してみてください。たとえば、”喉が痛く、咳が出て、熱も高いんですね”といった風にです。」

「カルテをイメージして診察するんですね。やってみます」

先生はアドバイスを意識しながら再度診察を始めました。

医師とクラークの協力がよい診察につながる

「喉の痛みがあり、咳があり、痰もあると、熱は39.5度。インフルエンザかもしれないので、検査してみましょうか」

先生は先ほどよりもはるかに丁寧な診察を行います。

それを受けて、クラークさんは「先生、咽頭炎あり、咳あり、痰あり、発熱39.5って入力すればいいんですね」軽快なリズムで患者さんの主訴がカルテに入力されていきます。

医師とクラークがお互いを気遣い、工夫しながら入力スタイルを確立する。
現場での研修のよいところは、医師とスタッフが一緒に研修を受けることにあるのだと思います。
一緒に受けることで一体感も増し、クラーク運用に対するベクトルも合っていきます。

終了時に皆さんに感想をお聞きしました。

「4時間は長いと思ったけど、あっという間でした」
「電子カルテなんて入力したくないと思ったけど、意外にできそうです」
「クラークなんて、私にできるはずがないと思いましたけど、大西さん乗せるのうまいですね。やってみます!」

そんなやりとりを見ながら、医師の満面の笑みが。やっぱり現地での研修はいいですね。

執筆:大西

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