診療報酬改定DXの影響
骨太の方針2023に盛り込まれた「診療報酬改定DX」について、今回は解説します。
骨太の方針の中で、「診療報酬改定DXによる医療機関等の間接コスト等の軽減を進める」と書かれています。その背景には、政診療報酬改定時に、医療機関やシステムベンダが短期間で集中してシステム改修やマスタメンテナンス等の作業に対応することで、大きな非効率が起きていることを政府は問題視しているのです。
とてもタイトな診療報酬改定スケジュール
確かに、診療報酬改定のスケジュールはとてもタイトです。1月に改定の項目(短冊)が決まり、2月の中医協答申で点数が決まり、3月に関係告知や疑義解釈が出され、4月から新たな診療報酬のルールに基づき医療機関は算定しなければなりません。約2カ月弱で仕組みがガラリと変わるのです。医療機関は新たな算定ルールを理解する必要が生まれ、システムベンダーはシステム改修を進める必要があるのです。
出典:「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム資料について(2022.9.22,厚労省)
診療報酬改定DXの流れ
6月2日に医療DX推進本部がまとめた工程表で、具体的な診療報酬改定DXの内容が明らかにされています。
今後は2024年度にマスタ及び電子点数表を改善し提供。併せて、診療報酬算定ルールの明確化・簡素化を図り、診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行うための全国統一の共通的な電子計算プログラムである「共通算定モジュール」の開発を進め、2025年度にモデル事業を実施した上で、2026年度において本格的に提供するとしています。なお、標準様式を実装した標準型レセプトコンピュータについては、標準型電子カルテとの一体的な提供も行うことが考えられています。
このことからもわかるように、診療報酬に関する算定ルールを整理し、データベース化して、それをロジックに落とした標準型レセプトコンピュータに仕立てあげ、システムベンダーに共通算定モジュールとして提供することで、一気に効率化を図ろうとしているのです。
出典:医療DX推進本部幹事会(2022.11.24,内閣府)
標準型レセコンの開発は、標準型電子カルテに比べてはるかに実現可能性は高いように感じます。診療報酬はすべての情報がコード化されており、請求の仕組みもすでにデジタル化されています。そして何より、日本医師会がすでに標準型レセコンの開発に成功しているのです。
レセプト点検の仕組みも盛り込むのではないか
また、標準型レセコンのリリースに合わせて、審査支払機関の「レセプトのコンピュータチェック」に関しても併せて提供しようとし準備を進めています。
現在、審査支払機関はこれまで問題となっていた、国保と社保の点検内容の違い、都道府県ごとの違いの解消に向けて取り組みを進めています。また、レセプト点検自体も8割がたシステムが行うように変わっています。この仕組みを標準型レセコンとともにリリースすることができれば、医療機関は診療報酬の算定、そしてレセプト点検という医療事務が行ってきた業務の効率化が一気に進むのです。
これが実現すれば、医療事務という仕事の本質が変わってくるのではないかと思うのです。レセプトの解釈のスペシャリストという位置づけが変わっていくのではないかと考えます。このような状況から、医療事務から医療クラーク(医師事務作業補助者)という職種へ転換の流れがさらに進むのではないかと考えます。