気をつけたい算定漏れ~注射料編~

今回は、注射料についてお話させていただきます。さらに点数表の解釈付きです。

注射をしたときの算定

注射をしたときの点数は、そのときに使用した薬剤料と注射をする実施料(注射手技料)とを合わせて算定します。実施料は、点数表に決まっている通りで「G000 皮内、皮下及び筋肉内注射 20点」「G001 静脈内注射 32点(6歳以上)」「G004 点滴注射 97点又は49点(6歳以上)」が外来で行われる一般的な注射になると思います。

○○に準じて算定する

点数表の「G000 皮内、皮下及び筋肉内注射」の通知部分(2)に書かれている「涙のう内薬液注入、鼓室内薬液注入、局所・病巣内薬剤注入、子宮腟部注射、咽頭注射(軟口蓋注射、口蓋ヒヤリー氏点の注射を含む)、腱鞘周囲注射及び血液注射」は皮内、皮下及び筋肉内注射に準じて算定する、と記載されています。つまり行っていることは違いますが、点数はこれで算定する(これが妥当)という解釈になります。

間違えないで

区分番号「G007 腱鞘内注射」は27点です。腱鞘周囲注射は、上記の通り皮内、皮下及び筋肉内注射に準じて20点になります。

点数算定の注意点

静脈内注射は乳幼児加算(6歳未満の加算)がありますが、皮内、皮下及び筋肉内注射には乳幼児加算(6歳未満の加算)はありません。これは点数表で静脈内注射のところには加算ができると書いてあり、皮内、皮下及び筋肉内注射のところには加算ができるとは書いてないためです。

記載がないから組み合わせOKという場合も

また、静脈内注射と点滴注射は同一日に両方の注射実施料を算定することは出来ません。これも点数表に書かれています。では、皮内、皮下及び筋肉内注射と静脈内注射はどうでしょうか。この2つは同一日でも別々に両方を算定することができます。これは点数表には書かれていないことです。
この場合は「静脈内注射と点滴注射は同一日に併用算定できない」とわざわざ記載されていますので、記載がない組み合わせ同士は両方とも算定して構わないものだと解釈します。

このように点数表には「(加算してよいと)書いてあるから算定できる。または、(同時算定不可と)書いてあるから算定できない」という明確な場合と、「(ダメだとは)書いてないから算定できる。または、(加算してよいとは)書いてないから算定できない」というように記載されていないことから読み取って判断しなくてはならない(明確ではない)場合がありますので、なかなか解釈が難しいところですね。

麻薬加算は気づきにくいので注意

例えば「第6部 注射」の通則5に「注射に当たって、麻薬を使用した場合は注射実施料に5点を加算する」という記載あります。これは注射料すべての共通規則(ルール)になりますので、皮内、皮下及び筋肉内注射であっても、静脈内注射または点滴注射であっても、麻薬を使用したときには5点の加算ができるということです。(ただし注射実施料に対する加算になりますので、実施料が算定できないときには、この加算も算定できません)
この麻薬加算は、それぞれの注射実施料のところには書かれていませんので、最初からしっかり読まないと分からないことですし、気がつかないと損をすることになります。

注射料で誤りが多かったベスト3

今までの経験から、誤りが多かったベスト3を紹介します。
 1. 薬剤料のみの算定で実施料(注射手技料)が未入力
 2. 薬剤名に「静注用」と付いている薬剤を皮内、皮下筋肉内注射で算定
 3. 点滴静注用の抗生剤(粉薬)を輸液なしで算定

最近はレセコンや電子カルテでの入力が主体ですから、薬価を調べたり点数があっているかを計算して確認することは少ないと思います。また、注射薬剤を入力すると実施料は自動的に皮内、皮下筋肉内注射を算定する場合もありますし、3番目の誤りは輸液もセットになっているキット製剤と単品の製剤を選び間違えてしまったことが原因と思われます。これらは電子カルテで最初にセッティングをしたときや、使い易いようにセットを組んだ時点で間違っている可能性が高いので、電子カルテのセッティングを信じて使っているときには気づきにくいところだと思います。

点数表とは

「診療報酬点数表」は算定ルールをまとめた辞書です。ただ、見ただけでは分からないことも多く、使い方を理解したうえで、言葉の解釈ができないと、正しく使いこなすことはできません。読めば読むほど意味が分からなくなる、なんてこともしばしばですから、書いてないことまで読み取るなんて至難の技でしょう。しかし、この点数表が医療事務を続けていくには必要不可欠の存在でして、思い込みではなく書いてある通りに解釈しなくてはならない点数表。なぜ、もっと分かりやすい言葉で、分かりやすく書かれていないんだろう…素朴な疑問でもあり、改善されることを切に願っています。

執筆:日本医業総研

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