気をつけたい算定漏れ~整形外科編 パート1~
医療事務の基礎知識(5)
今回は、整形外科で必要となるお話しです。
からだの部位や骨の名称も知っていないと間違えてしまうところなので、しっかり覚えてくださいね。
まずは学習!
からだの部位で、肘から手首までを前腕(ぜんわん)と呼びます。ここには骨が2本あり、親指側の太い骨が橈骨(とうこつ)、小指側の細い骨が尺骨(しゃっこつ)です。両方とも前腕にある骨なので、総称して前腕骨(ぜんわんこつ)と呼びます。
これらを骨折した場合、「橈骨(または尺骨)遠位端骨折」または「橈骨(または尺骨)近位端骨折」という病名をつけられることが多いと思います。この遠位端とは心臓から遠い、近位端は心臓に近いという意味になりますので、遠位端骨折のときは手関節(しゅかんせつ)のレントゲンを撮ります。
近位端骨折のときは肘関節(ちゅうかんせつ)のレントゲンになりますから、気をつけて見てみると『なるほど!納得!』だと思います。
点数算定の注意点!
ここからが本題です。このような骨折時に整復をすることが多いと思いますが、整復には2通りの方法があり、1つは入院をして行う手術、もう1つは外来で行う徒手整復(としゅせいふく)です。
徒手整復の場合、点数表からは「非観血的手術=切らない(開けない)で元に戻した」という点数を選びます。「K044 骨折非観血的整復術」です。
ここがポイント!
点数表を見ると、整復をした骨によって点数が3つに分かれています。
一見、橈骨や尺骨とは書かれていないので、3番目の「手、足その他」を選ばれることが多く、医療機関様が損をされていることがあります。
ここで最初の学習に戻りますが、「橈骨も尺骨も前腕骨」でした。ですから、橈骨や尺骨の整復の場合は2番目の「前腕、下腿」を選びます。
この差340点(3400円)。知らないで間違い続けると収入にも大きな影響が出てしまいますので、しっかり覚えて正しい算定をしてくださいね。
関連があるので一緒に覚えてね!
整復後は骨折部位に近い関節を必ず固定します。この固定にも方法がいくつかあります。
既製品のアルミや軟化成形使用型のプラスチックなどでできている副木(シーネ)で固定した場合は、使用した副木代も特定保険医療材料として算定できます。
また、この副木をギプスと同じ硬い素材のもので作製して使用した場合にはギプスを巻いたときと同じ点数が算定できますので間違えないでくださいね。
注意点はここにもあります!
ギプス包帯(注1)とギプスシーネ(注2)は、装着したときの点数が同じですが、その後に気をつけることがあります。
ギプス包帯後に既装着のギプス包帯をギプスシャーレ(注3)として切割して使用した場合には、ギプスシャーレという名称で所定点数の100分の20に相当する点数が算定できます。
しかし、ギプスシーネ後にギプスシャーレにするということはありませんので覚えておきましょう。
また、ギプスシーネ後にギプス包帯に変更するということもありますし、ギプス包帯後に再度巻き直してギプス包帯ということもあります。
このようなときは、その都度ギプス包帯の点数が算定できますのでしっかり算定していただきたいと思います。
〈参考〉ギプスについて
ギプス料の点数算定時に気をつけること。「J122 四肢ギプス包帯の1~6」の中でよく出てくるのが「3 半肢」と「5 上肢、下肢」です。
この違いは、上肢(肩~手首)の場合は、肘よりも上から巻いたら「5 上肢」で、肘よりも下から巻いたら「3 半肢」で算定します。
下肢(大腿~足首)の場合も同様で、膝よりも上から巻いたら「5 下肢」で、膝よりも下から巻いたら「3 半肢」で算定します。
(注1)ギプス包帯は、石膏またはプラスチック素材の硬いもので、患者様のからだにあわせてぐるぐる包帯のように骨折部位に巻きつけながらしっかり固定します。
(注2)ギプスシーネは、副木(シーネ = 棒のこと)をギプスと同じ硬い素材のもので作製して固定します。骨折部位が腫れていたり、傷を伴っていたりしてギプスをぐるぐる巻けないときなどにこの方法が行われます。
(注3)ギプスシャーレは、ぐるぐる巻いた硬い包帯を、上のふたと下のお皿になるような感じで上下に切割し、下のお皿だけをしばらく固定に使う場合をいいます。そのときの切割料がギプスシャーレ代として算定できます。
このように、シーネは最初からふたがないお皿(棒)だけで固定をしているので、シーネの後にシャーレにする(切割をする)ことはないのです。
一般的には、ギプス包帯 → ギプスシャーレ → ギプス除去ですが、傷を伴う場合などは傷が治るまでギプスシーネで固定をして、傷が治ったらギプス包帯に変更する場合もあります。
最後に、ギプスの除去料はギプスを装着した医療機関では算定できません。他の医療機関で装着したギプスを除去した場合に限り、装着していたギプス包帯の所定点数の100分の10に相当する点数が算定できます。
執筆:日本医業総研