クラーク運用で患者回転率を高める〈2〉
クラーク運用のススメ(5)
前回は、「外来患者の回転率と満足度を高める」ことの大切さについて書かせていただきました。クラーク運用で患者回転率を高める〈1〉
では、具体的にはどうすれば回転率と満足度を高めることができるのでしょうか。
医師・スタッフのチームマネジメントが患者回転率を高める
例として、都内で開業されている皮膚科診療所で行った、患者回転率を高める取組みをご紹介しましょう。
このクリニックでは診察室を増やし、医師が診察室を順番に移動することで一度に多くの患者さまを診ることを実現しています。その結果、1人の医師が200名の患者さまを診療時間内に診ることができるようになりました。
この運用が実現できた背景には、医師、看護師、看護助手、クラークのチームマネジメントを行ったことがあります。
診察の流れ
1 | 患者さまは受付で問診票を受け取り、必要事項を記載します。 |
2 | 受付に提出された問診票を、「クラーク」が電子カルテに入力します。 |
3 | 診察室に患者さまが案内され、「クラーク」が問診内容の不明点を確認します。 |
4 | 「医師」は、問診票や過去のカルテを見ながら患部に触れ診察を行い、「看護師」に処置の指示を行います。 |
5 | 並行して「クラーク」は、医師と患者さまのやり取りを電子カルテに入力するとともに、医師の指示をコストとして入力します。 |
6 | 「医師」は次の部屋に移動し、「看護師」が処置を行います。 |
医師、看護師、クラークが連携しながら、それぞれの役割を全うすることで絶妙なチームワークのもと、高回転な診療が実現しているのです。
医師が診療に専念でき満足度の向上につながる
このクリニックの以前の運用は、医師が何でも行うスタイルであったため、患者さまの待ち時間が長く、診察押しによる残業も多くありました。しかも、医師が電子カルテばかり見て、患者さまの方を向いてくれないという不満も出ていたそうです。
その解決方法として、医師が診療に専念できる環境づくりとして、「複数の診察室とクラークの活用」という転換を行ったのです。
その結果、多くの患者さまをお待たせすることなく診察できるようになりました。
しかも医師が診療に専念していることで、十分に診察をしてもらっているという印象を持ってもらえるため、患者さまからも高く評価されているとのことです。
医師が診療に専念できる環境をつくるために、医師の業務を「医師しかできない仕事」と「医師でなくてもできる仕事」に分けて、後者を看護師やクラークに担ってもらった事例です。
この体制を実現するためには、医師とスタッフとの間で十分な信頼関係を構築する必要があります。医師、看護師、クラークがひとつのチームとして機能したからこそ、実現した診療所のスタイルです。
クラークの配置を評価する点数として、2008年に病院を対象とした「医師事務作業補助体制加算」が新設されて以来、クラークを配置する病院も増えています。
診療所では、いまのところ同加算の算定はできませんが、先ほどご紹介したように患者回転率を向上させるために、クラークを活用する動きが出てきています。
クラークを活用することで、「医師が患者さまに向きあい、お待たせしないクリニック」が実現できると考えます。
執筆:大西