コロナ禍に進む自動化と分散処理
コロナ禍で「接客業」が厳しい状況に
コロナ禍で世の中が不況になっているせいか、医療の世界で働くことを希望する方が増えているように感じます。新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受けている業種は、宿泊業、飲食業、公共交通機関(電車、バス、タクシー、飛行機など)、小売業など、「接客業」と言われる業種が厳しい状況がうかがえます。それらの業種の方々が医療界に流れ始めているのです。
コロナ禍はIT化、自動化を後押し
また、コロナ禍は「3密」を避ける行動をとる必要があることから、IT化、そして自動化が急速に進んでいます。医療機関でこの時期に多くの要望をいただくのが、以下のようなシステムです。
・自動精算機・セルフレジ
・キャッシュレス
・自動受付機(オンライン資格認証)
・Web問診システム
・オンライン診療システム
・診療予約システム
これらのシステムはいずれも患者さんとスタッフの接触を減らのに効果をもたらします。場所としては、患者さんが集まりやすい「受付」や「待合室」にシステム化が集中しているように感じます。
診療部門の密対策
一方で、診察室や処置室、検査室などで患者さんとの接触を減らすことは、システム化をいくら進めても物理的に無理なところがあるでしょう。そこで、できるだけ患者一人当たりの滞在時間を短くすることが有効であると感じます。それを実現するためには、「分散処理」という考え方が有効です。まず取り組むべきは、電子カルテの端末の増設でしょう。スタッフ一人に一台の端末を早急に実現する必要があります。現在、電子カルテの端末当たりコストが、クラウド化などの影響で、かなり減少しています。そのため、一人一台の端末は、実現しやすい環境が整っていると思われます。
仕事をどのように分散するか
診療部門で仕事をどのように分散するかを考えてみましょう。医師業務の分散としては、長らく進められている「クラークの活用」が考えられます。先に挙げたように、受付の自動化が進む中、受付からクラークの配置転換は人員的に可能性が高まっていると考えます。
医師の仕事の中から、「医師しかできないこと」を切り出し、それ以外をクラークや看護師に振ることができれば、同時に処理することが増え、患者さんの滞在時間を減らすことが可能になります。具体的な業務としては、「問診」「検査準備」「検査の一部」「予約」「カルテ作成」「書類作成」などです。これらはクラークや看護師が行うことが可能です。クラークや看護師も、スタッフ同士の密を避けるために、ポジションを決めて、流れ作業のように行うことをお勧めします。
また、部屋作りにも工夫が必要です。部屋をカーテンなどで仕切り、できるだけ細分化する必要があります。できれば一部屋には、患者さんとスタッフが1対1にし、密を減らす工夫が必要です。
医療の当たり前が変わろうとしている
医療は不況に強いと言われますが、今回の新型コロナウイルスは医療機関の経営にも大きな影響を与えています。また、医療における当たり前が変わろうとしているように感じています。医療の当たり前とは以下のようなことです。
・待合室が患者さんであふれている
・待ち時間(滞在時間)が長い
・スタッフが多く働いている
・パソコンはスタッフ同士で共用利用している
・出勤退社はみんな同じ時間
これまで当たり前はコロナ禍で3密を避けるために変える必要があるのです。これまで当たり前と考えてきたことを変えるのは現場にとっては多かれ少なかれ苦痛が伴います。しかしながら、コロナ禍は業務改善、業務効率化のチャンスと考えて積極的に取り組んでほしいと感じます。結果として、診療所の働き方改革が進み、生産性の向上に寄与するのではないかと考えます。
コロナ禍でも変わらない価値観とは?
医療現場の業務が細分化されればされるほど、一人一人の責任感や使命感を高める必要があります。医療は命を預かる場所です。一つの失敗が大きな事故につながります。その考えを一人一人がしっかりと持ち、実践することが大切です。業務の効率化は、大切なものまでも効率化してしまう可能性があることを忘れてはなりません。医療現場で働くためには、チームワークはもちろん大切ですが、チームの一員として認めてもらうためには、一人一人が責任感、使命感を持って業務にあたる考え方が大切なのです。