2023年1月、電子処方箋の開始

2023年1月より「電子処方箋」が開始されます。電子処方箋とは、現在紙で運用されている処方箋をデジタルでやり取りできるように整備するもので、義務化ではありませんが、医療機関・薬局はオンライン資格確認同様、準備が求められることになります。

 

電子処方箋開始の背景

2021年10月にオンライン資格確認の本格稼働、2023年1月に電子処方箋、2023年4月にオンライン資格確認の義務化と矢継ぎ早に、医療DX施策が開始される背景には、コロナ禍で露呈した我が国の医療分野のデジタル化の遅れへの危機意識があります。政府は、全国で医療情報をやり取りできるプラットフォーム(全国医療情報プラットフォーム)を早急に構築する必要があると考えているのです。

「医療情報」を全国でやり取りするためには、全国の医療機関・薬局を結ぶ安全なネットワークが必要です。また、「電子処方箋」開始し、医薬品データを医療機関・薬局・患者間で連携できるようにすることで、医療の質向上および医薬品の効率的使用につながると考えられています。今後は、医療機関・薬局・患者間で、処方だけでなく、検査結果や病歴、手術歴と医療情報の範囲を順次拡大していき、最終的には診療録(カルテ)の共有まで計画されています。

これらの取り組みの中で、医療情報の共有・蓄積がされ、その情報を2次利用することで、新たな価値が生まれると期待されていいます。これこそが政府が進める医療DXの中核である「データヘルス改革」の全貌です。

 

電子処方箋の仕組み

電子処方箋の基本的な流れは、以下の通りです。

①医療機関の医師が処方箋を「電子処方箋管理サービス(以下、管理サービス)」にアップロードする。

②薬局の薬剤師がその処方箋を薬局システム(レセコン等)に取り込み、薬を調剤し、薬局の薬剤師は薬を調剤した後、調剤結果を「管理サービス」にアップロードする。

③薬剤情報は「管理サービス」に蓄積され、医療機関や薬局で閲覧でき、患者もマイナポータルやそれと連携した電子お薬手帳で閲覧できるようなる。

 

電子処方箋のメリット

「電子処方箋」のメリットについて厚労省は以下のように解説しています。

 

○直近のデータを含む患者の過去3年分のお薬のデータが見られるようになる

医療機関・薬局にとっては、「電子処方箋」が普及することで、複数の医療機関・薬局をまたいで、直近データを含む過去3年分の投薬データが参照できるようになり、正確な処方情報を基に診察・処方・調剤が可能となるとしています。現在進めている「オンライン資格確認」による薬剤情報は、レセプトデータに基づいているため、レセプト請求後のデータとなり、直近データは確認することはできず、結局は患者の記憶やお薬手帳を頼りにするしかありません。しかしながら、電子処方箋が普及した場合は、リアルタイムで処方情報が共有できるようになるのです。

 

〇処方・調剤するお薬について、重複投薬や併用禁忌がないかチェックできる

 処方の際に、「重複投薬」がないか、「併用禁忌」にあたらないかを、「管理サービス」でチェックし、その結果が参照できる機能が用意されています。この仕組みを現在の処方箋発行から調剤に係る業務フローの中に組み込むことで、医師の診察・処方、薬剤師の調査をサポートできるとしています。

 

〇入力項目チェック、重複投薬等チェックを活用することで、問合せ件数の削減が期待できます

「電子処方箋」が普及することで、医師が処方箋を発行する際に「管理サービス」側で項目に不備がないかチェックするため、形式的な不備による問合せ件数の削減が期待できるとともに、医師側、薬局側で重複投薬や併用禁忌のチェックを相互に利用することで、疑義照会自体の件数が減少することが期待されています。

現在、医療機関と薬局の間で、処方箋の不備を確認し、不備があった場合は「疑義照会」として薬局から医療機関に問題処方についてフィードバックをしています。この仕組みは、いまだ電話やFAXといったアナログな部分も多く、医療機関と薬局の情報連携の際に大きな手間となっており、そこが改善できるのではないかとしています。

 

〇薬局では、処方箋のレセコンシステムなどへの手入力の負担や、保管・管理作業が削減される

薬局では「電子処方箋」により、処方箋のデータをシステムに取り込むことが可能になり、手入力の負荷が軽減されるとともに、入力ミスの軽減が期待できます。さらには電子処方箋の場合、紙の処方箋を物理的に保管する必要もなくなり、保管スペースの確保やファイリング作業が不要となります。薬局にとっては大きな業務効率化につながります。

 

医療機関・薬局が「電子処方箋」を導入する場合の補助金

医療機関・薬局が「電子処方箋」を開始するには、以下の3つの準備が必要です。

  • オンライン資格確認の導入
  • 電子署名等(HPKI)の取得
  • 現在のシステムの改修

これを実現するためには、ある程度の費用がかかることから、政府は電子処方箋導入に向けての「補助金」を用意しています。

電子処方箋管理サービスの導入にかかる費用について、例えば診療所であれば、2023年3月31日までにシステムを導入した場合、「19.4万円を上限に補助(事業額の38.7万円を上限にその1/2を補助)」とされています。2023年4月1日以降は補助率が1/3に下がるとしています。できるだけ早期に導入した方が有利な補助率となっています。

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