医療DX

医療DX令和ビジョン2030

医療DX令和ビジョン2030

政府は、コロナ禍で露呈した我が国のデジタル化の遅れを取り戻そうと、急ピッチで「医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)」にかかる政策を実現しようとしています。

2023年4月13日には、自民党は「『医療DX令和ビジョン2030』の実現に向けて」という提言書を公表しています。例年の傾向を見ると、これらの内容を踏まえて、今後「骨太の方針2023」が作られると思われます。
「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて~保健医療情報のデジタル活用により、すべての国民が最適な医療を受けられる国へ~(概要)

<グランドデザイン>

〇医療DXを通じて、より効果的かつ効率的で質の高い医療の提供を実現

○PHRの推進により、疾病の予防を促進し、国民の健康寿命を延伸

○医療機関等においてデジタル化による業務改革を行い、人材不足の状況を改善

○医療情報を研究や事業開発に利活用し、その結果を社会実装する取組(二次利用)を促進

○強力かつ一元的な司令塔の下、データ連携やアクセス管理を行うためのガバナンスの確保等

<医療DXの推進体制(ガバナンス)の強化>

〇社会保険診療報酬支払基金を抜本的に改組し、医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体に

○厚生労働省の大臣官房に司令塔機能を有する部署を確保し、改組後の新組織のあり方と厚生労働省内の体制等とを一体的に検討して、必要な法整備を速やかに実施

<全国医療情報プラットフォーム>

○オンライン資格確認等システムを拡充し、全国医療情報プラットフォームを構築

○電子カルテ情報共有サービス(仮称)を構築し、共有する情報を拡大

○二次利用に係る検討体制の立ち上げと利活用促進のための法令等を整備

○PHR等事業者が行うサービスに係るデータの規格標準化を早急に整えるなどにより、PHRを推進

○全国医療情報プラットフォームの運用費用は、情報の共有・交換が普及するまでの間、国が負担し責任をもって運営。その後は、国、オンライン資格確認等システムに拠出する保険者のほか、プラットフォームの利用に係る受益者で幅広く費用負担。二次利用のネットワークについては先行している取組事例も踏まえつつ、今後検討

<電子カルテ情報の標準化等>

○電子カルテ情報の標準化と標準型電子カルテの提供により、必要とされる、すべての医療情報が共有される

○中小規模を含むすべての医療機関への導入及び普及を目指し、国が責任をもって取り組む

診療報酬改定DX>

○医療機関等における診療報酬改定に伴う間接経費の極小化に向け、マスタを改善・開発し、早期に提供

○共通算定モジュール・標準型電子カルテを併せて提供し、医療機関システムを抜本的に改革

○診療報酬改定の施行時期について、合理的な期間が確保されるよう、数ヶ月後ろ倒しに

出典:「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けて(自民党)
https://storage.jimin.jp/pdf/news/policy/205658_1.pdf

 

医療DXとは何か

ところで「医療DX」とは、何でしょうか。この本質の理解がなければ、政府が進める医療DXに参加する意味を見出すことが難しいのではないでしょうか

医療DXとは、医療分野におけるデジタル技術を活用した「変革」を意味します。従来のやり方をデジタルの力で変えようとする試みであり、それを全国規模で行おうとしているのです。かつて医療界は、1970年代に生まれた「レセコン(医事会計ソフト)」によって、診療報酬算定業務が効率化され、レセプトの「オンライン請求」によって、請求業務が効率化されました。そして、現在は「オンライン資格確認」「電子処方箋」そしてその先にある「電子カルテ情報の共有」によって、医療情報の共有を効率化しようとしているのです。

 

「医療DX実現」の条件

さて、医療DXを進めるためには3つのプロセスが必要となります。それは「インフラ整備」「情報のデジタル化」そして「デジタル化の普及・参加」です。

「インフラ整備」とは、全国的に医療機関・薬局を結ぶオフィシャルなネットワークを構築することを意味します。「オンライン資格確認」のネットワークがこれに当ります。

「情報のデジタル化」とは、アナログな医療情報をデジタル化することで、全国規模で構築されたネットワーク上で情報交換・共有ができるようになる姿です。このやり取りとは、情報共有に留まらず、情報を蓄積し、AIなどにより解析を行うことで、新たな価値(医療の質向上)を生み出そうとしているのです。

これらが実際に動き出すためには、「全員参加」が必要不可欠です。そこで、医療DXに全医療機関・薬局を参加させるための施策として、補助金による資金的援助と、最終手段としての「義務化」が進められているのです。

 

医療DXとは「ゲームチェンジ」である

2023年4月に「オンライン資格確認」は義務化されましたが、現在のところ「電子処方箋」は義務化されていません。医療DXに参加するかしないかは、医療機関・薬局に委ねられています。

しかしながら、公的医療保険のもとで保険請求を行っている以上、政府の仕組み変更に対応しなければ、保険医療機関として存在することができなくなります。それが「義務化」という意味です。政府の医療DXの進め方については、賛否両論ありますが、確実に言えることは医療DXによってゲームチェンジ(ルール変更)が行われようとしている今、抵抗・拒否するよりも早めに参加し、デジタル化の恩恵を得ることの方が得策ではないかと考えます。

mailmaga

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