「令和4年度診療報酬改定と紹介状のタスクシフティング」

令和4年度の診療報酬改定の議論が大詰めを迎えています。12月に基本方針の策定、改定率が決まり、1月14日には厚生労働大臣から中医協に諮問が行われています。諮問の際に、これまでの中医協の改定議論をまとめた、議論の整理(案)が示されており、改定の骨子は概ね固まったと言えるでしょう。今後は2月に向けて点数に落とし込む作業が行われることとなります。

 

改定の主要テーマ

 「令和4年度診療報酬改定」の主要テーマは、「感染症対策」「地域包括ケア」「働き方改革」「ICT」という4つとなります。その背景には、コロナ禍で初めて行われる改定であり、新型コロナの感染拡大で露呈したデジタル化の遅れ、地域連携の未成熟、超高齢社会を受けての働き方改革を早急に進める必要があるからに他なりません。中でも、働き方改革とICTは対の内容であり、クリニックにとっても両者を並行して進めていく必要があります。

 

外来医療と地域連携

「外来医療と地域連携」について、「紹介状なしで受診した患者等から定額負担を徴収する責務がある医療機関の対象範囲を見直す」としています。具体的には、現在の特定機能病院及び地域医療支援病院(200床以上)から、一般200床以上の病院すべてに範囲が拡大されることが予想され、対象病院は現在の8.5%から16%に拡大されます。結果的に、かかりつけ医であるクリニックは紹介状の増加が見込まれることになります。

また、新たに設けられる「紹介受診重点医療機関」と「かかりつけ医機能を有する医療機関」が、紹介先医療機関に対して診療情報を提供した場合についても新たな評価を行うとしており、「診療情報提供料Ⅲ」の見直しが予想されます。

 

このように政府は外来と入院の機能分化・連携を進めることで、効率的な医療提供が可能となると考え、「地域連携」をスムーズに進めるためにも、診療情報提供書の役割に注目しています。また、病院の役割として、かかりつけ医の役割を担う病院と、外来を縮小し、入院に特化する病院に2つに分けて、機能を整理することを進めています。

それらの変化の中で、クリニックはかかりつけ医としてゲートキーパーの役割がますます重要となり、診療情報提供書等の書類の増加に対応する体制づくりが求められることになります。

 

いまこそタスクシフティングを

書類作成が重要なクリニックの役割になる中、医師から事務への業務のタスクシフティングが大切になると考えます。法的にも「書類の下書き」「電子カルテの代行入力」は事務が行える業務と認められており、クラークの配置がクリニックでも進んでいます。将来の地域連携に伴う書類の増加に向けて、医師から事務への業務移行を進める必要があると考えます。

 

書類の作成依頼のポイント

さて、事務に書類の作成をお願いするには大切なポイントがあります。いきなり、諸会場の下書きをお願いしたとしても、すぐにできるはずがありません。紹介状にどんなことが書かれていて、その情報はどこから入手・作成するのか、紹介状がどんな役割を担っているのか、そういったことを一から教える必要があります。また、紹介状特有の言い回しもあり、事務にとっては「とてもできない」と考えることでしょう。また、書類作成業務は、あらたな業務へのチャレンジですので、現在多くの業務を抱えている事務にとっては、「とても手が回らない」と考えていしまうのです。

そこで順序立てて説明することが大切になります。説明の順序は以下の通りです。

  • 今後、なぜ紹介状が増えていくのか(今回の改定内容の説明)
  • 紹介状がすぐに作成できないとどんな問題が起きるのか(患者の待ち時間につながる)
  • 紹介状には何が書かれているのか(紹介目的・サマリー・処方など)
  • まずは「カルテの転帰」から始める

このような手順を踏むことで、事務は自らの役割が大変重要であり、自らが対応することでクリニックのためになると理解いただけると思います。その際に、いかにクリニックにおいて事務が重要で、「これからの成長に期待している」ことをしっかり伝えることも忘れずに行ってください。

mailmaga

ページの先頭へ