医療事務の募集のポイント
昨今、少子化や賃上げの影響を受けて、医療事務職の募集が非常に難しくなってきています。私は広島の専門学校で電子カルテやクラークについて教えているのですが、医療事務を目指す学生がかなり減ってきているように感じます。その結果、医療事務の専門学校も減ってきているようです。
今は、ネット検索をすれば様々な職業・職種に関する知識を簡単に得られる時代ですから、「医療機関は大変な職場」というイメージが広がり、医療機関で働く魅力を感じにくくなっているのかもしれません。4年制大学への進学率も上がっています。
また、医療事務の専門学校に通っているのに、調剤薬局や企業に行きたいという理由で、卒業後に医療機関では働かないという人も出てきています。
履歴書のチェックポイント
そのような状況下で、少ない応募の中から良い人材を採用するためには、いくつかポイントがあります。まずは、応募者との最初の接点である「履歴書の見方」について考えてみましょう。
- 年齢と職歴:その年齢にふさわしい職歴なのかを見極めます。例えば、まだ若いのに転職を10回以上繰り返している場合は注意が必要です。職歴をチェックし、次に経験をチェックします。どのよう経験を積んできたのかが重要です。
- 経験した診療科:診療報酬制度は、あらかじめ定められた点数を基に医療機関が報酬を受け取る仕組みです。診療行為を決められた診療報酬の点数に換算する必要があります。
- 診療報酬診療科ごとに診療報酬の内容や点数が異なるため、クラークにとっては、様々な診療科を経験し、より多くの診療行為についての知識があるほど良い人材と言えます。
- 履歴書の体裁:履歴書が手書きで書かれている場合は、字がきれいかどうか、素直な字かどうかを確認します。極端なくせ字は、事務業務の際に誤解やトラブルのもとになる可能性があるため注意が必要です。また、写真についても適当に撮ったものか、しっかり撮影したものかということまで確認します。これら履歴書の体裁は、その人の、物の扱い方や丁寧さが表れ、これも患者とコミュニケーションをとる際の必須の能力です。
- クリニックからの距離:応募者の住所を確認してクリニックからの距離が遠い場合は注意が必要です。通勤に時間がかかると、それがストレスとなって積み重なり、早期退職につながる可能性があります。
応募者の経験ごとのチェックポイント
病院経験者の場合
クリニックではなく、病院での勤務経験者の場合は、まず外来と入院のどちらの経験があるかを確認します。なぜなら、入院点数と外来点数は全く違い、働き方も異なるからです。当然、外来の経験者のほうがクリニックには向いています。
自院の診療科未経験者の場合
残念ながら、自院の専門科の経験がない人しか採用できなかった場合は、院長が診療報酬制度など、医療事務に必要な知識を教える必要があります。
教えたほうが良い具体的な内容は、診療科の特徴、主な疾患、検査、薬、診療科特有の診療報酬点数(医学管理料や加算など)となります。もし、教えるのが難しい場合は、私のような専門のコンサルタントに依頼するのも一つの方法です。
新入職者指導のポイント
私が、医療事務の学生に教えている中で気づいたことは、「自分は教えたつもりでも、思った以上に、相手(生徒)は理解していない」ということです。「この点数はこういう仕組みです。分かりましたか」と聞いて、「はい」と答えたとしても、本当に理解しているとは限りません。躓いているか、理解できず不安そうな表情をしていないかなどを見たり、質問したりして、何を理解し、何を理解していないのかを確認しながら指導を進めなければ、適切な育成につながりません。また、一度で理解できなかったとしても、繰り返し教えることが大切です。それほど教えるのは根気がいることなのです。
入職後も、しっかりとした教育体制があることは、昨今の人材採用に必要不可欠な強みとなります。ぜひ、院内での教育のあり方についても考えてみてはいかがでしょうか。