気をつけたい算定漏れ~レセプトの傷病名編~

近年、医療を取りまく環境が厳しさを増し、医療機関のレセプト審査も厳しくなっているという話は皆さんもよく耳にされると思います。「今までは認められていたことが突然減点されてきた!」なんてことはありませんか?そんな内容を少しでも共有できたらと思いまして、今回はレセプトを提出する前に気をつけていただきたい点検ポイントのうち「傷病名」についてお話させていただきます。

はじめに!

レセプトは、「これらの傷病名に対して、このような医療行為をしました」という診療報酬明細書です。しかし、実際には「このような医療行為を行ったので、これらの傷病名をつけました」という発想でレセプトを点検されている方は少なくないと思います。確かに、日々行われた診療行為をお金に換えることは大切ですし、損をする必要もありませんので、審査で問題なく認めてもらえるようなレセプトを作成することはとても大切なことです。

だからといって、いわゆる「保険病名」を並べてしまうと、傷病名と診療内容に整合性がなくなってしまい、おかしなレセプトになりがちです。こうなると審査側にマイナスの印象を持たれてしまい、審査の目が厳しくなる可能性も高くなります。

減点されやすい項目!

以前から末梢血液像やCRPといった炎症反応を確認する検査は減点されやすい傾向にあります。これらはスクリーニング検査からは外し、必要なときにその都度追加していただいた方がいいと思います。

例えば気管支喘息でCRPや胸部のレントゲン(単純撮影)を行うこともあると思いますが、この場合は両方とも適応外になりますので減点される可能性があります。初診時に限り認める地域や保険者さんもあるかもしれませんが、正確にいえば気管支や肺、心臓の炎症や疾患を確認するために行われている検査ですので、気管支喘息とは別に「肺炎の疑い」など必要になります。

このように医学的にはあまりにも当たり前すぎて傷病名を付け忘れてしまったり、省略されてしまうことによって減点されていることもあると思います。

 ここにも注意!

内視鏡の検査後に病理組織標本作製の検査に出されることがあると思います。これも医学的には当然のことと思いますが、癌を疑っての検査になりますので保険請求としては、やはり「○○癌の疑い」という傷病名が必要になります。

また「境界型糖尿病」や「耐糖能異常」でHbA1cを行うこともあると思いますが、この場合も「糖尿病の疑い」をつけた方がいいと思います。

絶対にダメ!

炎症病名の話に戻りますね。医療機関によっては炎症反応の検査の際、一律に「膀胱炎の疑い」や「急性上気道炎」などとつけているレセプトを見かけることもありますが、これはやめた方がいいと思います。検査をした全員にパターン化してつけていることもよくないですし、膀胱炎を疑ったらまずは尿検査をすると思いますが、尿検査の算定がない場合もありますので、明らかに保険病名ということでおかしなレセプトになってしまいます。また、癌やリウマチ、心筋梗塞やその他の炎症病名などCRPの適応疾患名がきちんとついている場合でもパターン化した傷病名がつけられていることがあり、あまりにも事務的で違和感のあるレセプトに疑問を感じることもしばしばです。

患者様は皆さん違いますので、一人一人に必要な検査を行って、その疑った理由を傷病名にしてください。

 思い込みもダメ!

高血圧症では、心電図も胸部の単純撮影も認められます。しかし、「狭心症の疑い」では心電図は認められますが、胸部の単純撮影は認められませんのでご留意ください。これは先生方でしたらお分かりのことでしょうけれど、事務スタッフさんの間では、「高血圧症はいいのだから、狭心症でも何となく大丈夫そうな気がする」と思われている方もいらっしゃると思います。これは大きな間違いです。

もう1つ注意点!

昨年の春頃からでしょうか、かぜの症状に対して抗アレルギー剤を処方したときに「アレルギー性鼻炎」と病名をつけた患者様に、かぜの治ゆ後、新しい症状に対して改めて初診料を算定したところ、再診料に減点されたという話をよく聞きました。これは「アレルギーはすぐに治る疾患ではないため、初診料は認められない」という解釈のようです。同じアレルギー疾患で気管支喘息もあります。気管支喘息は特定疾患の対象病名でもありますが、症状が落ち着いている時期もあるため「一季節一疾患」として認められているようです。つまり薬剤の服用や吸入薬の使用なども一切ない状態で一旦治療が途切れたときには、改めて初診として取り扱うことも可能になります。この期間はだいたい3ヶ月以上が目安と思われます。

ですから、同様にアレルギー性鼻炎と付けられたときには、全く治療をしていない期間として3ヶ月以上は間があいていないと初診としては認められないのだろうと思います。

最近の審査傾向!

そして最近では、微生物学的検査の「D017 細菌顕微鏡検査」と「D018細菌培養同定検査」を同時に算定すると、片方が減点されてくるとよく聞きます。これは、両方を行う必要性をコメント記載すれば、場合によっては認められるようですが、実際には減点されることが多いようです。これは傷病名のお話ではありませんが、ご参考までに。

まとめ

保険診療を行って、保険請求をするわけですから、保険で認められるようにレセプトを作成する必要があります。そのためにもレセプトには必要な傷病名をきちんと記載しなくてはなりませんが、その数は多すぎても少なすぎてもよくない場合があります。これらは、先生方がレセプト点検をされることで改善できることもありますが、医事スタッフがレベルアップをすることで改善できることもあります。レセコンや電子カルテの普及によって容易に入力できる半面、ただ機械的に入力しているということも多いと思います。ルール化している内容がありましたら、この機会に見直しをされてはいかがでしょうか。

今後、レセプトについての内容もたまには書いていこうと思いますので、参考にしていただけましたら幸いです。

執筆:日本医業総研

レセプトの診断、レセプト担当者のさらなる知識UPを図りたい場合はこちらをご覧下さい。
mailmaga

ページの先頭へ