気をつけたい算定漏れ~処置料の算定について~

医療事務の基礎知識(19)

今回は「処置料」について、一部ですが解説します。

処置料は名称が似ているものもありますし、項目が多いので選び間違えないことも大切になります。また、点数表ではそれぞれの処置料が記載されている前の通則に注意事項が記載されているものもありますので、それぞれの項目のところでは省略されていることがあり、判断を誤るケースも少なくないと思われます。

同日に併用算定不可

たとえば、点数表で処置料の最初に「2種類以上の処置を同一日に行った場合」と記載がありますので、ここに記載されている項目同士は主たるものを1つしか算定できません。また、ここには記載されていないけれども同日に併用算定できない項目もあります。それらについては、それぞれの項目の注意事項や通知に記載されているので確認をして算定しなくてはなりません。

(例:「J097 鼻処置」と「J098 口腔、咽頭処置」は同日併用算定不可、「J118 介達牽引」と「J119 消炎鎮痛等処置」も同日併用算定不可 など)

また、「消炎鎮痛等処置」と「皮膚科光線療法」は同日に併用算定はできませんが、これは皮膚科光線療法の通知部分にしか書かれていませんので、消炎鎮痛等処置の方だけを確認した場合には気づかないこともあります。点数表をしっかり確認することがとても大切です。

基本診療料に含まれる処置

点数表で「通則3」に基本診療料に含まれる処置の項目が記載されています。これらの処置は行っても初診料や再診料に含まれてしまうため、別に算定できないという意味です。ですが、これらの(基本診療料に含まれる)処置に使用した薬剤料は2点以上になる場合でしたら算定できます。

この中に「100c㎡未満の第Ⅰ度の熱傷」と書かれています。

単純に「あ、範囲が小さいと算定できないんだ。」「Ⅰ度で軽いと算定できないんだ。」という思い込みは、算定漏れの原因になり兼ねません。良く見ると、小さくて軽かったらという内容ですから、小さくてもⅡ度以上のやけどでしたら熱傷処置で算定できます。また、軽くても範囲が広ければ(100c㎡以上なら)やはり熱傷処置で算定可能です。算定漏れのないように気をつけてくださいね。


 参考

Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度はやけどの程度を表します。

・Ⅰ度の方が軽く、赤くなる程度

・Ⅱ度は水泡(水ぶくれ)ができる

・Ⅲ度は皮下組織まで損傷したもの


目や耳など対称器官の処置

通則6に「対称器官に係る処置の区分の所定点数は、特に規定する場合を除き、両側の器官の処置料に係る点数とする。」とあります。特に規定する場合とは、処置名の末尾に「片側」「1肢につき」等と記入されたものをいいます。

この記載がある処置料は両側に行った場合、片側ごとに(両側ならば点数×2で)算定できます。この記載がない処置料は、片側だけに行っても両側に行っても点数は同じで1回分の点数を算定します。

J057-3鶏眼・胼胝処置は「左右は一連」というルールが以前からありますが、これは手や足の左右に処置を行っても点数は1回分しか算定できないということです。(手と足は別部位になりますので、それぞれ算定できます)また今年の4月から、月に2回までの算定が可能になりました。

傷の処置について!

傷の処置にも種類があり、算定の違いは傷病名によって判断します。

・J000創傷処置 … 切創、挫創、擦過傷、咬創などの外傷 または 関節捻挫に対して副木固定を行った場合(使用した副木は、特定保険医療材料の項により算定できる)
・J001熱傷処置 … 熱傷、電撃傷、薬傷、凍傷
・J053皮膚科軟膏処置 … 湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、帯状疱疹、白癬、円形脱毛症 など

複数の部位に処置を行った場合は、処置の範囲を合算した広さで1回として算定します。また、同一部位に異なる処置を行った場合は、どちらか一方の処置料のみを算定します。(薬剤は使用した分を合算して算定できます)

これらの処置に共通する広さは、単に傷の大きさで判断するのではなく処置を行った範囲であり、ガーゼや包帯で傷を覆った場合にはその仕上がった範囲の広さで算定できますので、ここも間違わないように、正しく選択してくださいね。

気をつけて

ここでよく見かける症例が、皮膚疾患だけど掻きむしってしまい傷になっているところに処置をするといった内容です。この場合、傷病名に皮膚疾患の病名しかなかったら創傷処置を算定されますと減点になります。傷の傷病名がないと創傷処置は認められませんのでご留意ください。

創傷処置と皮膚科軟膏処置の違い

創傷処置と皮膚科軟膏処置は上記のように適応病名が異なりますが、この症例のようにどちらで算定するかを迷われることもあると思います。ルール上での違いは、「100c㎡未満の処置」に対する算定です。同じ広さでも、創傷処置は52点で算定できますが、皮膚科軟膏処置は基本診療料に含まれて算定できません。だからといって、そのかわりに創傷処置で算定することも認められませんので、傷の傷病名を付けられていても、明らかに皮膚疾患に対する処置であると判断された場合には、やはり減点されることもあり得ると思います。

虫刺症や蜂窩織炎(ほうかしきえん)

これらも創傷処置で算定するか、または皮膚科軟膏処置で算定するかを迷ったことはありませんか。「虫刺され」で調べてみると、皮膚科への受診が一般的のようですので、皮膚科軟膏処置かなとも思いますが、創傷処置で算定されているレセプトもよく見かけます。そして蜂窩織炎(皮膚の深い層から皮下の脂肪組織にかけて細菌が感染し、炎症を起こす病気)もどちらの処置で算定されている例もあると思います。これらの判断は、地域や医療機関によっても異なると思いますが、蜂窩織炎の注意点をひとつ。蜂窩織炎は明らかな傷を伴わない場合もありますので、治療に使う抗生剤は飲み薬と注射薬は認められますが、ゲンタシン軟膏などの外用薬は適応外になります。ご留意ください。

絆創膏固定術にも注意

「J001-2 絆創膏固定術」は、算定できる傷病名が限られています。「足関節捻挫」と「膝関節靱帯損傷」です。捻挫と靱帯損傷は同じ状態を意味しますが、「足関節靱帯損傷」で算定すると減点されますのでご留意ください。

さらに「交換は原則として週1回とする」という記載があります。この週1回とは日曜日から土曜日までの1週間に1回の算定という意味で、原則と書いてありますのでイレギュラーの場合には詳記を記載すれば認めてもらえるかもしれませんが、実際にはかなり難しいと思います。

腰部又は胸部固定帯固定

腰痛症の患者に簡易式のコルセットで腰部固定を行った場合や、肋骨骨折等に対してバスとバンドで胸部固定を行った場合には、「J119-2 腰部又は胸部固定帯固定」35点を算定します。固定に使用したコルセット代は、サイズ等に関わらず「J200 腰部、胸部又は頚部固定帯加算」170点が算定できますので、自費で請求しないように気をつけてください。(頚椎カラーで固定を行った場合も同様の算定になります。)

医療機関の新しいコルセットを使って固定を行った場合には合わせて205点の算定になりますが、この2つは必ずしもセットで算定するものではありません。コルセットを渡すだけのときは170点のみを算定し、または患者が持参したコルセットを使って固定を行った場合には35点だけの算定ということもあります。

また、「B001の17 慢性疼痛疾患管理料」を算定された場合や、リハビリテーション料または消炎鎮痛等処置などを算定されたことによって、「J119-2 腰部又は胸部固定帯固定」35点は算定できない場合でも、コルセット代に当たる「J200 腰部、胸部又は頚部固定帯加算」170点は算定できますので間違わないように気をつけてください。

 

処置の項目も多いので、とりあえず今回はここまでにしたいと思います。

今後もクリニックで役立つ内容をいろいろ書いていきますのでご参考にしていただけましたら幸いです。

—この記事は2018年9月に書かれたものです—

執筆:日本医業総研

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