医療事務の基礎知識―インフルエンザ―

インフルエンザの予防注射が始まる時期となりました。今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の関係で、対応が難しいと皆さんおっしゃられています。ちなみに、昨シーズンは、感染対策の徹底の影響でインフルエンザの感染者が大きく減少したとの報告がありました。

 

インフルエンザ流行に備えた体制整備

2020年9月4日に厚労省から「次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について」という通知が出されています。簡単に要旨を解説します。

 

〇インフルエンザの流行期には多数の発熱患者が発生しており、今年度も同程度の発熱患者が発生することを想定して対策を講ずる必要がある。

〇専門家によると、インフルエンザと COVID-19 を臨床的に鑑別することは困難であることが指摘されている。今後は、インフルエンザワクチンの需要が高まる可能性がある。

〇都道府県は「基本的な方向性について」を踏まえ、次のインフルエンザ流行に備えた体制整備を進め、10 月中を目処に体制整備を完了する。

 

基本的な方向性

同通知では、インフルエンザ流行に備えた対応に関する「基本的な方向性」として、以下のようにまとめています。簡単に要旨を解説します。

 

〇都道府県は、発熱患者等がかかりつけ医等の地域で身近な医療機関等を相談・受診し、必要に応じて検査を受けられる体制について、本年 10 月中を目途に整備する。

〇医師会等とも協議の上、発熱等の症状を生じた患者が、かかりつけ医等の地域の身近な医療機関にまずは「電話等」で相談を行い、当該医療機関も含め、診療可能な医療機関を案内してもらい、必要に応じて検査を受けることができる体制を、地域の実情に応じて多くの医療機関で整備する。

〇相談体制の整備として、患者が相談先・受診先に迷うことがなく、また、一つの医療機関や相談窓口に殺到することないように、発熱患者等が「電話等」で相談を行い、看護職員等が適切な医療機関を案内するとともに、家庭内での感染対策や受診にあたっての留意事項などの指導を行える相談体制を整備した医療機関を指定し、速やかに増やす。

〇診療・検査体制の整備として、多数の発熱患者等が地域において適切に診療・検査を受けられるよう、既存の帰国者・接触者外来等も含め、発熱患者等の診療又は検査を行う医療機関を「診療・検査医療機関(仮称)」として指定し、速やかに増やすこと。

〇院内感染を防止するには、患者が医療機関と受診時間や受診方法等を事前に調整した上で、受診することが重要である。そのため、都道府県等や医療機関は、発熱等を伴う受診の際は事前に電話予約の上で受診することを徹底するよう、広く住民に周知する。

関連通知:次のインフルエンザ流行に備えた体制整備について(厚労省)

https://www.mhlw.go.jp/content/000667888.pdf

 

このように、地域の都道府県と医師会が主導で整備することを厚労省は求めています。また、かかりつけ医がが広く対応できる体制が想定されており、その際は、「電話やオンラインでの診療体制」の整備や、予約システムなどを活用した「予約体制」が必要になってくると考えられます。

 

インフルエンザ検査算定にあたっての注意点

① 採取料も忘れずに算定しよう

インフルエンザの一般的な検査として行われている「迅速診断キット」による検査を行った場合は、検査料とは別に、検体採取料の「鼻腔・咽頭拭い液採取:5点」も忘れずに算定してください。

 

また、インフルエンザの検査と溶連菌の検査を同日に行うことは認められていますが、この採取料は1日につき1回の算定になりますので、同日にインフルエンザの検査と溶連菌の検査を行っても採取料は1回しか算定できません。もちろん同日にインフルエンザの検査を2回行っても1回だけの算定になります。

 

② 検査に対する傷病名

インフルエンザの検査は、「発症後48時間以内に実施した場合に限り」算定することができます。また、A型とB型の検査を合わせて実施した場合は、「主たるもののみ」算定が可能です。

 

検査をするタイミングによっては、仮に感染をしていても陰性になる場合があります。そのため、連日で検査を行うことも実際にはあります。このような場合は、傷病名に「インフルエンザの疑い」と付けて、一度「中止」と転帰します。そして再検査を行う日付で再度「インフルエンザの疑い」(陽性の場合は確定病名)を付けると2回までは審査的にも認められるものです。(地域によっては異なることもあります)

 

作成:MICTコンサルティング https://mictconsulting.com/

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