「新型コロナウイルス蔓延による、新たな診療提供のあり方」

2020年初頭からはじまった新型コロナウイルスの蔓延は、医療界に大きな変革を迫っています。厚労省から相次いで出された通知でも明らかなように、医療現場のクラスターを防ぐために、ICTを活用した新しい診療提供のあり方を進める意思が強く打ち出されています。

初診から電話・オンライン診療の解禁

4月10日の厚生労働省通知により、「初診から電話・オンライン診療」が限定解除となりました。これまで頑なに、電話やオンラインでの診療はあくまで再診で、初診は対面でという姿勢を貫いてきた方針から、一気に初診からでも対応可能とした、今回の変更は、大きな英断であったと思います。それほど、医療現場は切迫しているという危機感の表れではないでしょうか。医療機関でのクラスタ―をどう防ぐか、同時に患者への適切な医療をどう継続できるか、という観点から、いち早く来院せずに、継続した医療サービスが受けられる体制整備が必要と考えたのでしょう。

 関連通知:新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その10)https://www.mhlw.go.jp/content/000621316.pdf

初診は214点を算定

事務連絡によると、「初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をする場合」には、患者の診療について、診療報酬の算定方法A000初診料の注2(※1)の「214点」を算定することが可能となりました。(初診料は288点)

その際、医薬品の処方を行い、FAX等で処方箋情報を送付する場合は「調剤料、処方料、処方箋料、調剤技術基本料、又は薬剤料」を算定することができるとしています。

一方で、既に医療機関で診療を継続中の患者が、他の疾患で医療機関にかかる場合は、本来は初診にあたりますが、その場合は「電話等再診料(73点)」を算定することとしています。

医学管理料は147点を算定

慢性疾患を有する定期受診患者に対して、一部の管理料の算定が認められています。具体的には、電話や情報通信機器を用いた診療及び処方を行う場合であって、以前より対面診療において診療計画等に基づき療養上の管理を行っており、「情報通信機器を用いた場合」の注に規定されている管理料等(特定疾患療養管理料等)を算定していた患者に対しては、電話や情報通信機器を用いた診療においても計画等に基づく管理を行う場合は、B000の2に規定する「許可病床数が100床未満の病院の場合」の「147点」を月1回に限り算定できるとしています。(本来、診療所の場合は225点、月2回)

麻薬、向精神薬、ハイリスク薬の処方は不可

医師が電話・情報通信機器を用いた診療で、診断や処方が医師の責任の下で医学的に可能であると判断した場合であっても、「麻薬及び向精神薬の処方」はしてはならないとしています。

また診療の際には、できる限り、過去の診療録、診療情報提供書、地域医療情報連携ネットワーク、健康診断の結果など診療録等により患者の基礎疾患の情報を把握・確認した上で、診断や処方を行う必要があるとしています。診療録等により患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、「処方日数は7日間」を上限とされています。

さらに、特に安全管理が必要な医薬品(いわゆるハイリスク薬)についても、診療報酬における薬剤管理指導料の1の対象となる薬剤(抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤等)の処方をしてはならないとしています。

処方箋の取扱い

患者が薬局で電話や情報通信機器による情報の提供及び指導を希望する場合は、処方箋の備考欄に「0410対応」と記載し、患者の同意を得て、医療機関から患者が希望する薬局にFAX等により処方箋情報を送付することが可能になっています。その際、医師は診療録に送付先の薬局を記載することとしています。また、医療機関は「処方箋原本」を保管し、後日、処方箋情報を送付した薬局に原本を送付することになります。

さらに、初診から電話、オンラインの処方を行う際に診療録等により患者の基礎疾患を把握できていない場合は、処方箋の備考欄にその旨を明記することとしています。院内処方についても患者と相談の上、医療機関から直接配送することを認めています。

受診方法による選別が始まる

政府は、今回の初診からの電話・オンライン診療について、それに対応する医療機関を自治体ごとに取りまとめて、ホームページ等で公表するとしています。患者は、それを頼りに受診方法を検討するという新しい流れが出て来ることが予想されます。新型コロナの感染リスクを避けるために、できるだけ受診を控えたいと考えれば、自ずとリスクの低い「電話受診」や「オンライン受診」を患者が選ぶのは明白でしょう。

医療現場では、電話やオンラインでの限界を理解した上で、患者を守り、スタッフを守り、そして医療機関を守るための医療サービスの提供に、いち早く対応する必要が出て来るのです。

(執筆:MICTコンサルティング

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