医療事務の基礎知識~消化器内科~

医療事務の基礎知識(18)

今回は、消化器内科の内容です。

傷病名は大丈夫?

胃の内視鏡検査を行う際には、当然「胃」の傷病名が必要です。

医学的には「逆流性食道炎」でも胃の内視鏡検査を行うようですが、診療報酬の審査では、胃の内視鏡検査料(1,140点)を算定されていて、傷病名が「逆流性食道炎」しか無かった場合には、「D306 食道ファイバースコピー 800点」に減点される可能性があります。(食道よりも奥である)胃までみる必要性が確認できないということで減点するようです。

また、胃の内視鏡検査時に組織を採取して、悪性腫瘍ではないかを疑い、病理検査をされることもあると思いますが、このときには「胃がんの疑い」が必要になります。

このように、医学的には正しくて当たり前のことであっても、保険診療では認められないこともありますので、傷病名のつけ方にはお気をつけください。

プロトンポンプ阻害薬(PPI製剤)

PPI製剤は、胃潰瘍と逆流性食道炎の場合は8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの処方が認められています。それ以上継続する場合には、逆流性食道炎の維持療法で処方されることと思いますので、「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」という傷病名が必要です。「難治性逆流性食道炎」でも認められるとは思いますが、「難治性=治りにくい」だけでなく、再発や再燃を予防するための維持療法が必要であることもポイントになりますので「維持療法の必要な難治性逆流性食道炎」が適応病名になると思います。

ちなみに「パリエット錠20mg」のみでは、維持療法は認められていません。また、「タケキャブ錠」を逆流性食道炎で処方される場合は通常4週間までであり、効果が不十分の場合は8週間までと限定されていますので、ご留意ください(再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法を目的として用いる場合を除く)。

期間の数え始めは

8週間(または6週間)の期間をいつから数え始めるかについてですが、基本的には胃潰瘍や逆流性食道炎などの傷病名が付いた日から、と考えるのが一般的です。レセプト摘要欄に「○月/○日よりPPI製剤の投与開始」とコメントを入れられることもありますが、この記載は無くてもとくに構いません。記載の目的は、処方期間の数え始める日が、いつからであると分かるためですから、もし記載するのであればPPI製剤の処方が傷病名の付いた日からでは無かった(傷病名が付いた日よりも後からだった)場合にのみ記載すればよいと思います。

ヘリコバクター・ピロリ感染

ピロリ菌の感染を疑って検査をされることもあると思いますが、ピロリ菌の有無を疑うには、内視鏡検査で胃炎か胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がされている患者(潰瘍の診断は造影検査でも可)でなければならないので、「検査を行ったら疑い病名を付けておけばよい」というものではありません。

また、除菌前の感染診断方法は6通りありますので、どの検査方法で行ったのかをしっかりと確認し、検体が血液の場合には採血料の算定もれや、尿素呼気試験で行った場合は使用した薬剤(ユービット錠またはピロニック錠)料の算定もれなど誤りのないように気をつけてください。

※6通りの方法については、点数表等でご確認ください(医学通信社2018年4月診療点数早見表P406~)

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌薬剤

「ランソプラゾール + アモキシシリン + クラリスロマイシン」「オメプラゾール + アモキシシリン + クラリスロマイシン」等の3剤併用で7日間服用します。これらがすべて含まれてセットになっているのがランサップです。1シートごとに1日分となっていますので7日分の処方をします。

除菌終了後

除菌薬剤を服用終了後、2週間以上経過したあとに再度感染診断を行い、除菌が成功したか否かを確認すると思いますが、このときレセプトの摘要欄に除菌終了日の記載が必要ですので忘れないようにしてください。

まだ気をつけることはありますが、とりあえず今回はここまでにしたいと思います。

医療事務の方でも、日々の業務やレセプトに携わる中で、少しは医学的なことやお薬のことも知っていた方がいいですね。知らないとレセプトを見ても良いのか悪いのか分からないこともありますし、言われたことを事務的に行うだけでは、誤りも増えてしまう可能性があります。

今後もクリニックで役立つ内容をいろいろ書いていきますのでご参考にしていただけましたら幸いです。

—この記事は2018年7月に書かれたものです—

執筆:日本医業総研

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